...餘りに明るい光りが暗さを生むやうに淋しいうつろな家々の近所で勇しい雀ばかりが啼いてゐる...
千家元麿 「自分は見た」
...・春もどろどろの蓮を掘るとや・春がゆくヱンジンが空腹へひびく・くもりおもたい蛇の死骸をまたぐ・食べるもの食べつくし雑草花ざかり・春はうつろな胃袋を持ちあるく・蕗をつみ蕗をたべ今日がすんだ・菜の花よかくれんぼしたこともあつたよ・闇が空腹・死ぬよりほかない山がかすんでゐる・これだけ残してをくお粥の泡・米櫃をさかさまにして油虫・それでも腹いつぱいの麦飯が畑うつ・みんな嘘にして春は逃げてしまつたどしやぶり...
種田山頭火 「其中日記」
...虫のねほそる秋の野を染めし昨日の露霜や萩が花ずりうつろへば移る錦は夕端山思入る日に啼く鹿の紅葉織りなす床の上...
土井晩翠 「天地有情」
...菊はまだ褪(うつろ)わずして狂うものは狂いそめ...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
......
内藤鳴雪 「鳴雪句集」
...狂的な空虚(うつろ)な眼を光らせて...
直木三十五 「ロボットとベッドの重量」
...あの梅の大木のうつろの中へ...
中里介山 「大菩薩峠」
...だが、その人は、眞劍で、青白い顏に、オドオドした大きな眼が、うつろで、まぶちの赤いのが目立つてゐた...
長谷川時雨 「傘」
...この章にうつろうとして...
長谷川時雨 「最初の外国保険詐欺」
...躯(からだ)も心もうつろになつた気がして...
林芙美子 「浮雲」
...空(うつろ)な視線をあてどもなく漂わせながら...
久生十蘭 「キャラコさん」
...其方(そち)一人がうつろな心で戯(たわ)けながらに世を渡ったのじゃという事をしかと胸に覚えるが好(よ)い...
ホフマンスタアル Hugo von Hofmannsthal 森鴎外訳 「痴人と死と」
...もう虚(うつろ)な死をあからさまに示していた...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...わたしゃアまた、ゆうべのことがあったから、てっきり、捕手がお出(い)でかと思ったのさ」そして、市十郎の横顔を、ながし眼に見たが、市十郎は、凝然(ぎょうぜん)と、あらぬところへ眼をやったまま、うつろな身を、石のようにしていた...
吉川英治 「大岡越前」
...四条畷の直後にうつろう...
吉川英治 「私本太平記」
...宋江はうつろな眸(ひとみ)で...
吉川英治 「新・水滸伝」
...ぼんやりと空虚(うつろ)なものが今日も彼を坐らせていた...
吉川英治 「親鸞」
...しかし背はうつろで...
和辻哲郎 「古寺巡礼」
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