...泣きわめく遺族に取り囲まれたうつろな死骸(しがい)のように...
有島武郎 「或る女」
...夢を見ている様な空(うつろ)の声が答えた...
江戸川乱歩 「吸血鬼」
...いまも、ふと、蚊帳の中の蚊を追い、わびしさ、ふるさとの吹雪と同じくらいに猛烈、数十丈の深さの古井戸に、ひとり墜落、呼べども叫べども、誰の耳にもとどかぬ焦慮、青苔ぬらぬら、聞ゆるはわが木霊(こだま)のみ、うつろの笑い、手がかりなきかと、なま爪はげて血だるまの努力、かかる悲惨の孤独地獄、お金がほしくてならないのです...
太宰治 「二十世紀旗手」
...硝子(ガラス)ごしに青葉がうつろい...
谷譲次 「踊る地平線」
......
種田山頭火 「其中日記」
...自分の心は全く空虚(うつろ)になつた...
永井荷風 「黄昏の地中海」
...盛(さかり)久しき躑躅(つゝじ)の花の色も稍うつろひ行く時...
永井荷風 「来青花」
...火が対岸へ燃えうつろうとしているのを...
中里介山 「大菩薩峠」
...うつろふ色を御覧じても...
中里介山 「大菩薩峠」
...うつろな耳で、それでも彼は庭のどこからか聞こえてくる一匹の蝉(せみ)の声に耳をすましているようにみえた...
中島敦 「李陵」
...悲しみが空のやうにひろくふかくうつろにひろがりました...
新美南吉 「かぶと虫」
...「お父さん、どうしたの?」マンのその言葉が聞えたのか、聞えなかったのか、うつろな眼で、ジロリと見て、「ウンコじゃ」くぐもった声でいって、ゆらゆらと、便所の方に行った...
火野葦平 「花と龍」
...輝くうつろのまばゆさの中に落ち込んでゆくかと見えた...
フィオナ・マクラウド Fiona Macleod 松村みね子訳 「海豹」
...うつろな目で前の方を見たまま...
三好十郎 「胎内」
...うつろい易いこの世の事柄に対する哲学的侮蔑ではない...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...あまりうつろい過ぎていて...
吉川英治 「江戸三国志」
...どこかに空虚(うつろ)の窺(うかが)える光秀の容子(ようす)にだけは...
吉川英治 「新書太閤記」
...顔つきと手頸の繃帯がうつろわない...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
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