...箱根(はこね)方面へ逸走(いっそう)した...
芥川龍之介 「白」
...いっそ殺すがよい...
芥川龍之介 「偸盗」
...私(わたくし)の姫(ひめ)をお慕(した)い申(もう)す心(こころ)は一層(いっそう)強(つよ)まってまいりました...
浅野和三郎 「霊界通信 小桜姫物語」
...熱が下がったのできげんのよかるべき貞世はいっそうふきげんになって見えた...
有島武郎 「或る女」
...「いっそのこと、そうだ、いっそのこと」彼女は幾度も、幾度も、決心をしては思い返した...
江戸川乱歩 「黄金仮面」
...これよりもなおいっそう適切な題目を付けることはできぬ...
丘浅次郎 「境界なき差別」
...いっそう仕事を励むとともにその時計を大切にして...
相馬愛蔵、相馬黒光 「一商人として」
...いっそもう一度盗みに行きたくなるのだった...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...いっそう遠慮をしなければならないという法があるものか...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...いっそう力を落したようです...
中里介山 「大菩薩峠」
...「甲府にいたとき噂にも聞いたろうが、夜な夜な辻斬をして市中を騒がせたのは、みんな拙者の仕業(しわざ)じゃ」「エエ! あなたがあの辻斬の本人?」「それをいま知って驚いたからとて遅い、昨夜はまたむらむらとその病が起って、居ても立ってもおられぬから、ついあんなことをしでかした」「ああ、なんという怖ろしいこと、人を殺したいが病とは」「病ではない、それが拙者の仕事じゃ、今までの仕事もそれ、これからの仕事もそれ、人を斬ってみるよりほかにおれの仕事はない、人を殺すよりほかに楽しみもない、生甲斐もないのだ」「わたしはなんと言ってよいかわかりませぬ、あなたは人間ではありませぬ」「もとより人間の心ではない、人間というやつがこうしてウヨウヨ生きてはいるけれど、何一つしでかす奴等ではない」「あなたはそれほど人間が憎いのですか」「ばかなこと、憎いというのは、いくらか見どころがあるからじゃ、憎むにも足らぬ奴、何人斬ったからとて、殺したからとて、咎(とが)にも罪にもなる代物(しろもの)ではないのだ」「本気でそういうことをおっしゃるのでございますか」「もちろん本気、世間には位を欲しがって生きている奴がある、金を貯めたいから生きている奴がある、おれは人が斬りたいから生きているのだ」「ああ、神も仏もない世の中、それで生きて行かれるならば……」「神や仏、そんなものが有るか無いか、拙者は知らん、ちょっと水が出たからとて百人千人はブン流されるほどの人の命じゃ、疫病神(やくびょうがみ)が出て采配(さいはい)を一つ振れば、五万十万の要(い)らない命が直ぐにそこへ集まるではないか、これからの拙者が一日に一人ずつ斬ってみたからとて知れたものじゃ」「おお怖ろしい」「真実、それが怖ろしければ、いまのうちにここを去るがよい」「それでも、こうなった上は……」「こうなった上はぜひがないと知ったならば、お前は、拙者のすることを黙って見ているがよい」「ああ、わたしはいっそ、あなたにここで殺されてしまいたい」「いつかそういう時もあろう、その帳面のいちばん終(しま)いへ、お前の名を書いて歳を入れずにおくがよい」「ああ、わたしは地獄へ引き落されて行くのでございます」「地獄の道づれがいやか」「否(いや)と言っても応(おう)と言っても、こうなったからは仕方がございませぬ、わたしはどうしたらようございましょう」「なんと言っても甲州の天地は狭いから、ともかくもこれから江戸へ行くのじゃ、おそらくお前は生涯、拙者の面倒を見なければなるまい」「わたしは怖ろしくてたまりません、けれどもどうしてよいかわかりません、それでもわたしはあなたと離れようとは思いません」「黙って拙者のすることを見ていてくれ」「黙って見てはいられません、わたしもあなたと一緒に生きている間は、あなたのような悪人にならなければ、生きてはおられませぬ」三恵林寺(えりんじ)の師家(しけ)に慢心和尚(まんしんおしょう)というのがあります...
中里介山 「大菩薩峠」
...そうしてみると、やっぱり、迷惑でも、自分があの二人を引きつれてこの温泉を出て行ってしまった方が、宿の者全体に禍(わざわ)いの種を残さぬようになるから、いっそ、そうしてしまおうか...
中里介山 「大菩薩峠」
...この時はまた弁信法師の山登りがいっそう気がかりになってたまらないのみならず...
中里介山 「大菩薩峠」
...いっそ夜討のそば屋を二人で共演しようかといふ話になる...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...この子ともう一人の上の子の六人口をまかなっているんでしょ? いっそ私なぞ...
三好十郎 「廃墟(一幕)」
...お願い申したのですが」喜兵衛はいっそう低く頭を垂れた...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...――参木は久しく忘れていた鞭を、今頃この暗中で厳しくこんなに受け出したのを感じると、それなら、いっそのこと、このまま火を点けずにおいてくれるのは、むしろこっちのためだと思うのだった...
横光利一 「上海」
...千駄が谷から東北方に当たって更にいっそう大きい入道雲が現われた...
和辻哲郎 「地異印象記」
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