...女性(によしやう)の中の最も美しき女性として生ける日に誉ありしクラリモンドこそ此処(ここ)に眠れ「確に此処ぢや...
テオフィル・ゴーチエ Theophile Gautier 芥川龍之介訳 「クラリモンド」
...「南無(なも)、当来の導師」と祈るを耳にして、「かれ聞き給へ、此世とのみは思はざりけり」と語る恋と法(ほう)との界目(さかいめ)は、実に主人公の風流に一段の沈痛なる趣を加え、「夕暮の静かなる空のけしき、いとあはれ」な薄明(うすあかり)の光線に包まれながら、「竹の中に家鳩といふ鳥の、ふつかに鳴くを聞き給ひて、かのありし院に、此鳥(このとり)の鳴きしを」思うその心、今の詩人の好んで歌う「やるせなさ」が、銀の器(うつわ)に吹きかける吐息の、曇ってかつ消えるように掠めて行く...
上田敏 「『新訳源氏物語』初版の序」
...あの方のありし日の優しいお姿を追想するのであります...
上村松園 「無題抄」
...故にヨブにこの事ありしは不可解であると...
内村鑑三 「ヨブ記講演」
...盡きぬは恨み春の雨ともしび暗きさよ中の夢のたゝちをいかにせむありし昨日の面影に替はらぬ笑みも含ませて名におふ花の一枝は嗚呼その細き玉の手に...
土井晩翠 「天地有情」
...汝がありし時には時間が存在していなかったのだから...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...かのくえんしの建立(こんりゅう)ありし姫宮(ひめみや)の持仏堂(じぶつどう)も思ひ出られて哀れなり...
永井荷風 「江戸芸術論」
...田口掬汀の某作等ありしと記憶す...
永井荷風 「書かでもの記」
...言問(こととい)のほとりにも中の植半とて名高き酒楼ありしが大正のはじめには待合風の料理屋となり女夫風呂(めおとぶろ)とか名付けし鏡張りの浴室評判なりしが入浴中に情死を遂げしものありて忽(たちまち)客足絶えほどなく家も取壊しになりしと聞けり...
永井荷風 「桑中喜語」
...幸(さち)ありしよ...
永井荷風 「舞姫」
...ありし昔の夢に耽(ふけ)りながら...
中里介山 「大菩薩峠」
...不肖(ふしょう)ながら学資を供せんとの意味を含みし書翰(しょかん)にてありしかば...
福田英子 「妾の半生涯」
...家へ電話したら東宝の橋本から電話ありし由...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...そぞろごといひけることのありしか...
正岡子規 「曙覧の歌」
...彼が此篇ありし所以決して偶然ならざる也...
山路愛山 「頼襄を論ず」
...かなしみも此処にありしと誰れ知らん...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
...搦手(からめて)は谷あり山あり深林ありして鳥も翔(か)け難いほどな地相である...
吉川英治 「三国志」
...従来とかく遅鈍の評ありし当局も本事件においてはややその面目を保ち得たりと云うべし...
モウリス・ルブラン 新青年編輯局訳 「水晶の栓」
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