...あまつさえ手をあげて...
芥川龍之介 「さまよえる猶太人」
...あまつさえ酔に乗じて...
泉鏡花 「一景話題」
...月の影には相応(ふさわ)しい、真黒(まっくろ)な外套(がいとう)の、痩(や)せた身体(からだ)にちと広過ぎるを緩く着て、焦茶色の中折帽、真新しいはさて可(い)いが、馴(な)れない天窓(あたま)に山を立てて、鍔(つば)をしっくりと耳へ被(かぶ)さるばかり深く嵌(は)めた、あまつさえ、風に取られまいための留紐(とめひも)を、ぶらりと皺(しな)びた頬へ下げた工合(ぐあい)が、時世(ときよ)なれば、道中、笠も載(の)せられず、と断念(あきら)めた風に見える...
泉鏡花 「歌行燈」
...あまつさえ自分一人が幸運に舌鼓(したつづみ)を打って一つ鍋(なべ)を突付(つッつ)いた糟糠(そうこう)の仲の同人の四苦八苦の経営を余所々々(よそよそ)しく冷やかに視(み)た態度と決して穏当(おだやか)でなかったから...
内田魯庵 「美妙斎美妙」
...あまつさえ左の足首さえ切断されてしまった...
海野十三 「蠅男」
...あまつさえ彼らの利害には何の関係もないはずの私の片腕を折り...
海野十三 「放送された遺言」
...あまつさえ写生の道具などをも運んで贋(にせ)の現場を作り上げるなどと云う余裕は持てないことになる...
大阪圭吉 「闖入者」
...そしていいつけられたとおり、番手桶に水をくんで、広書院へもどってきたときには、すでに左近将監は死体をどこかへはこんでしまったものとみえて、もはやそこに若さまのすがたはなく、あまつさえ、大村藩城代家老ともあろう身が、袴(はかま)のももだちたかくとって、たすきをかけ、下男(げなん)のように、せっせと畳の血のり、欄間の血しぶきをふいておりました...
橘外男 「亡霊怪猫屋敷」
...あまつさえ彼らは...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...「あまつさえ、勘定奉行大橋近江守(おおはしおうみのかみ)殿を欺(あざむ)き、本多伯耆守(ほんだほうきのかみ)殿にまで御迷惑をかけ、百姓共の強訴(ごうそ)を拒んで、大公儀の御眼を昏(くら)ます不届千万の処置振り、天人倶(とも)に許さざる暴戻(ぼうれい)とは此事で御座るぞ――その兵部少輔殿の倖風情が、拙者の娘を申受け度いなどとは以(もっ)ての外だ、とっとと帰らっしゃれ――何、そう言ったが不足だと仰しゃるか、宜しいお相手仕(つかまつ)ろう、四人や五人の腰抜武士を恐るる拙者では無い、さア」五十幾歳の遠藤主膳、一刀を提(ひっさ)げて立つと、縁側の障子を押し開けて、夜の庭に飛出そうとするのです...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...田舎(いなか)の実科女学校まで出た千穂子が、こうしたあやまちを犯し、あまつさえ、父との間に女の子供を生んでしまったと云うことは哀(かな)しい運命に違いない...
林芙美子 「河沙魚」
...あまつさえ大衆から喝采を浴び...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「本命馬」
...自分に迷って死んだであろう……あまつさえ...
三上於兎吉 「艶容万年若衆」
...それだけでも淋しい谷中の深更け――あまつさえ...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...あまつさえろくに刀の抜きようも知らないで...
吉川英治 「剣難女難」
...あまつさえ丹後守の老臣ずれが...
吉川英治 「剣難女難」
...あまつさえ法外科五十余...
吉川英治 「親鸞」
...あまつさえ、この後とも、頼むぞと、すこしも主君顔をされない老公の真情にいたっては、さすがに狡智厚顔なかれも、(ああ、罰(ばち)が中(あた)ろう)と思わず身がふるえて来たのである...
吉川英治 「梅里先生行状記」
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