...腐菌(ふきん)の燐光(りんこう)を思わせる凄惨(せいさん)な蠱惑力(こわくりょく)をわずかな力として葉子はどこまでも倉地をとりこにしようとあせりにあせった...
有島武郎 「或る女」
...やはり学校生活を中止して文学に立とうという一つのあせりであった...
高浜虚子 「子規居士と余」
...灯取虫(ひとりむし)稿をつがんとあせりつつ帯に落ち這ひ上るなり灯取虫六月二十日 夏草会...
高浜虚子 「六百句」
...絶望に似たあせりが早くも俺をおそったが...
高見順 「いやな感じ」
...今度は彼があせり出した...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...血眼になって、あせりきって、歯噛みをして、地団太を踏みつづけながらも、どこか心頭の一片に鉄の如きものがあって、あらゆる短気と、焦燥(しょうそう)とを圧えきっている...
中里介山 「大菩薩峠」
...あせり立つた彼は相手の返辭をも待たず...
中島敦 「名人傳」
...一貫ありやお前何だつて食へるぢやないか」「その錢をくれたのは誰だ」佐吉は少しあせります...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...「何? お向うの炭屋の猪之松だ?――それがどうしたというんだ」功名にあせりきっている清吉は...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...手柄をあせり過ぎたんだ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...放さぬと痛い目させるぞ」焦慮(あせり)気味の慎九郎は...
長谷川伸 「討たせてやらぬ敵討」
...払ひのけようとあせりながら...
林芙美子 「浮雲」
...』『じゃア‥‥』『‥‥‥‥』『内部から本件が行われたとすれば?‥‥』課長はあせり立った...
モーリス・ルブラン Maurice Leblanc 婦人文化研究会訳 「探偵小説アルセーヌ・ルパン」
...さういふ気持で随分あせりもしたし...
北條民雄 「道化芝居」
...私は、最も簡単な書簡文を書かうと、あせりながら、一行書いては駄目にし、三行書いては破棄して、午までに、書簡箋を一冊費した...
牧野信一 「素書」
...脇の下に冷たいあせりが汗になつてにじんでまゐります...
室生犀星 「末野女」
...池田勝入父子のあせりに大きな敗因があったにしても...
吉川英治 「新書太閤記」
...晩生(ばんせい)あせり気味の一益などが...
吉川英治 「新書太閤記」
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