...向うで面の皮を剥かれたって好い心持はしねえ」「どっちへ向いても面の皮を剥かれるのは楽なものではあるまい...
中里介山 「大菩薩峠」
...この面の皮をいったいどうしてくれるんだ」金助はこう言いながら...
中里介山 「大菩薩峠」
...赤銅色(しゃくどういろ)に黒ずんだ顔面の皮膚の下の筋肉は鋭いほどに引締っている...
中里介山 「大菩薩峠」
...残されたわたしたちこそ全くいい面の皮...
中里介山 「大菩薩峠」
...脊中(せなか)一面の皮が毛穴ごとにむずむずして殆(ほとん)ど堪らなくなる...
夏目漱石 「それから」
...「だけど御正月早々御前さんも随分好い面(つら)の皮さね」「好い面の皮鯉(こい)の滝登りか」先刻(さっき)から傍(そば)に胡坐(あぐら)をかいて新聞を見ていた比田は...
夏目漱石 「道草」
...いい面の皮さ……馬鹿馬鹿しい浮世じゃないの? 今の世は真心なんてものは薬にしたくもないのよ...
林芙美子 「新版 放浪記」
...面の皮を引ん剥いた...
葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
...それに知らずに乘つたボオイこそいい面の皮だ...
堀辰雄 「エトランジェ」
...表面の皮がまず容易にとれる...
牧野富太郎 「植物知識」
...ヘツヘヘヘ、そんな事で一々踊らされて、無けなしの金で罐詰めの道具買つたり、製板の株買つたり、ハムを作るのに資本をかけたりして益々借金ふやす百姓こそ、いい面の皮だ...
三好十郎 「地熱」
...なんだ、……なんのためにあの野郎のことなんぞ云いだすんだ、ちぇっ、よしゃあがれ縁起でもねえ」「おれの云いてえのはそんなことじゃあねえ」彼はそれまで饒舌(しゃべ)ったことを打ち消すように、ゆらゆらと首を振り、するとよろめいて、よろめいたまま道を斜めに歩きながら呟いた、「――おれは天下の岸沢蝶太夫だ、女にかけたって人にひけはとりゃあしねえ、おぼこから年増まで、娘、かみさん、後家、くろうとの差別なく、これと眼をつけておれのものにならなかった女は、一人もいなかった、こっちからもちかけるまでもねえ、捌(さば)ききれなくてげっぷの出るほど向うからもちかけて来た、それが、……あの娘、おりうに限ってこんなことになるなんて、へっ、初めて逢ってからもうすぐ一年にもなろうってのに、手を握ったのが今日が初めて、おまけにいまいましいのはこっちがのぼせてることだ」彼は立停った、「なんだ」と彼は左右を見まわした、「仲次郎がどうしたってんだ、誰だ、仲次郎がどうしたってんだ」「へっ」と首を振って、彼はまた歩きだした、「小娘のくせにのぼせるな、今日まで手も握らなかったのはな、そっちが熱くなるのを見たかったからだ、それをなんでえ、ちょっと下へおりて、小部屋へ支度をするように云って、帰るともういねえ、へっ、いい面の皮だ、こっちは小部屋の支度を頼んだんだぜ、岸沢蝶太夫ともあろう者がさ、――お伴れさまはお帰り、土産の折詰にはなまで置いてある、いいざまだぜ」人の混雑する広小路を横切り、薬研堀(やげんぼり)から旗本の小屋敷のあいだを、住吉町のほうへぬけていった...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...いい面の皮だ」「あんなにお若くておきれいでいて...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...その顔面の皮膚の下から見る見る現われて来た兇猛な青筋……残忍な感情を引き釣らせる筋肉……それは宛然(えんぜん)たる悪魔の相好であった...
夢野久作 「暗黒公使」
...その表面の皮を一枚めくって...
夢野久作 「一足お先に」
...似せ天か本天かわからぬやつにまで引つたくられるのだからいゝ面の皮だ...
横瀬夜雨 「天狗塚」
...犬養毅以上の面の皮で描くんぢやないか――などと云つてよく私をからかふ...
吉川英治 「折々の記」
...いい面の皮だ」ほうほうの態で...
吉川英治 「剣難女難」
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