...否、清子は自ら恥ぢてゐるのだ、其爲に臆すのだ、と許り考へてゐた...
石川啄木 「鳥影」
...「……」老人は臆する気色もなく...
海野十三 「深夜の市長」
...すでに覚悟のできている太刀川は、臆する色もなく、一同をじろりとにらめわたしながら、悠然とつったっている...
海野十三 「太平洋魔城」
...私の記臆するところだけでも三四册あり...
佐野昌一 「虫喰ひ算大會」
...物に臆するやうな処は少しもなかつた...
高浜虚子 「椿子物語」
...あなたは臆するところ無く遊びます...
太宰治 「風の便り」
...臆する色もなく云い返したと云う話...
谷崎潤一郎 「聞書抄」
...上座に坐る人はどの家へ行つてもあたり前のやうに臆する所なく上座に坐るし...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...そうすると女は、臆する色もなく、「東山梨の八幡村から参りました」ハキハキと答えたそうです...
中里介山 「大菩薩峠」
...臆するところのない沈勇の影を宿した面(かお)を向けて...
中里介山 「大菩薩峠」
...決して臆するところはありません...
牧野信一 「女に臆病な男」
...故に何の臆するところなく大胆にその業をはじめ...
牧野富太郎 「牧野富太郎自叙伝」
...韓忠献臆すらく、年六、七歳の時病(やまい)甚だし、たちまち口を張りて服薬する状のごとくして曰く、道士あり、犬を牽き薬を以て我に飼う、俄に汗して愈(い)ゆと、因って像を書いてこれを祀ると(『琅代酔編(ろうやだいすいへん)』五)...
南方熊楠 「十二支考」
...爰には非雲が新夫に抗して髮亂れたとしたらしいが、外骨氏説に、本邦古畫に亂髮の女が露身せるは、之を下敷きにして行ふた體多しと、有たと記臆す...
南方熊楠 「蓮の花開く音を聽く事」
...しかしこれは些(ちと)の臆する氣色もなしに...
森鴎外 「最後の一句」
...いまはなんの臆するところもなく...
山川方夫 「箱の中のあなた」
...それも初めは、良人を慰めるつもりだったのも、いつか、若い日の自分の姿を思い描く哀調を、つと立たしめた、臆する色のない、澄み冴えた歌声に変った...
横光利一 「夜の靴」
...殆ど全身を臆するところはなく人に示してゐながら...
吉江喬松 「山岳美觀」
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