...わたしの宿の主人や「な」の字さんと狭苦しい町を散歩する次手(ついで)に半之丞の話をしましたから...
芥川龍之介 「温泉だより」
...狭苦しい置屋の店も縁起棚(えんぎだな)に燈明の光が明々(あかあか)と照り栄(は)えて...
近松秋江 「うつり香」
...店の向かって右の狭苦しい入口からすぐに二階へ上がるのであったかと思う...
寺田寅彦 「中村彝氏の追憶」
...待合の狭苦しい部屋に気詰りを感じ...
徳田秋声 「縮図」
...彼は年々自分の住居(すまひ)の狭苦しいのを感じてゐた...
徳田秋声 「風呂桶」
...厳めしいビルディングの中の狭苦しい室なんかに...
豊島与志雄 「公孫樹」
...S氏が世田ヶ谷のごみごみした露地内の、狭苦しい、蒸し暑い家で、口をパクパク二つ三つ喘がせて息を引き取った時、隣家の垣根を飛び越えてきた大きな虎猫がミャンミャンとドラ声で鳴いて近寄ると、未亡人が「それ猫が来た!」と縁側に出て手を上げて追っ払い、室に駆け戻ると、生前S氏が使っていた仕事机から、錆びた安っぽいナイフを出して、死人の枕もとに置いたことが、ふーッと頭に泛き出したのだ...
豊島与志雄 「現代小説展望」
...狭苦しい思いで床にはいった...
豊島与志雄 「都会の幽気」
...二十四周平は狭苦しい下宿の四疊半に身を投げ出し...
豊島与志雄 「反抗」
...思ったより汚い狭苦しい室だろう...
豊島与志雄 「反抗」
...穢ならしい狭苦しい家なんでしょうよ...
豊島与志雄 「理想の女」
...しかし一度(ひとた)び生れた故郷へ帰っては――生れた土地ほど狭苦しい処はない――まさかに其処(そこ)までは周囲の事情が許さず...
永井荷風 「監獄署の裏」
...狭苦しい道はいよいよせまくなったように思われてくる...
永井荷風 「深川の散歩」
...窓も一つも無い狭苦しいところで...
中谷宇吉郎 「エリセーフ氏」
...広い土地を狭苦しい谷底の日影にして...
夏目漱石 「永日小品」
...何でこんな狭苦しい鼻の先がつかえるような所へ来たのかと思うと情なくなった...
夏目漱石 「坊っちゃん」
...二三度狭苦しい路次を曲った...
堀辰雄 「幼年時代」
...狭苦しい迷宮じみた下六番町あたりの暗闇を自動車でマゴマゴするよりも...
夢野久作 「少女地獄」
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