...広庭を一つ隔てた母屋の方では、宵の口から、今度暑中休暇で帰省した、牛込桐楊塾の娘たちに、内の小児(こども)、甥(おい)だの、姪(めい)だのが一所になった処へ、また小児同志の客があり、草深の一家(いっけ)も来、ヴァイオリンが聞える、洋琴(オルガン)が鳴る、唱歌を唄う――この人数(にんず)へ、もう一組...
泉鏡花 「婦系図」
...「やあさん」のお母さんは三味線が上手で、よくお母さんの糸で「やあさん」が舞うていたが、夏の宵の口など、店先から奥が透けて見える頃になると、通りに人が立って、奥の稽古を見物していた...
上村松園 「四条通附近」
...まだ宵の口だというのに...
大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子 「耳香水」
...二二日)夕暮の一時冬の宵の口である...
千家元麿 「自分は見た」
...宵の口からまだ少しも眠ってはいませんでしたもん」と家内は恥ずかしそうに顔を赧(あか)らめました...
橘外男 「蒲団」
...宵の口に襲おうとした女とつながって来た...
田中貢太郎 「女の怪異」
...暖かな宵の口であった...
田中貢太郎 「水魔」
...こいつは宵の口に一杯呑(や)って酔っておりますんで...
林不忘 「安重根」
...私はまだ宵の口に...
豊島与志雄 「紫の壜」
...宵の口から白いものがついてゐた...
永井荷風 「雪の日」
...五その次の日の宵の口...
中里介山 「大菩薩峠」
...まだ宵の口であるか...
中里介山 「大菩薩峠」
...つまり、宵の口に出て、今時分になってこっそりとたち帰り、四方(あたり)の空気を驚かすまいために、出入り、立居ともに極めて静粛であったのですから、そのささやかな刀の鞘のカチリという音だけが鮮かに聞えたのですから、これは刀を腰から外(はず)して、そうして刀架へでもちょっと移す途端のさわりであったらしい...
中里介山 「大菩薩峠」
...どうせ宵の口から化けて出るエテ物だらう」平次はからかひ面(づら)でした...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...宵の口のフィラデルフィアにたちまち物々しい捜査網が繰り拡げられた...
牧逸馬 「チャアリイは何処にいる」
...まだ宵の口の八時頃...
山本笑月 「明治世相百話」
...買手どもの影は見えない宵の口であった...
吉川英治 「宮本武蔵」
...宵の口は多く右の...
若山牧水 「梅雨紀行」
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