...今の時勢では理想と云ふ言葉は、黴が生えて、尿に汚された言葉である...
阿部次郎 「三太郎の日記 第二」
...空気の蒸せた黴(かび)臭い例のにおいが室に満ちてる...
伊藤左千夫 「浜菊」
...プーンと黴の匂いが鼻をうつその黄色くなったドクトルの日記帳のページの中から...
海野十三 「蠅男」
...黴(かび)の生えた状態におちいった心を表現している...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...床屋には禿頭(とくとう)病の黴菌が何十万...
太宰治 「人間失格」
...これで十分・かうして暮らして何もかも黴だらけ・山のみどりを霧がはれたりつつんだり・うれしい朝の...
種田山頭火 「其中日記」
...疾病の種類(しゆるゐ)にして存在の証跡を今日に留むるは黴毒と虫齒なり是等の事は遺跡より出つる骨(ほね)と齒(は)とに由りて知るを得る事なれど...
坪井正五郎 「コロボックル風俗考」
...黴菌(ばいきん)がだんだん悪ずれがして来て黴菌の「ヒト」が悪くなるせいでもなさそうである...
寺田寅彦 「変った話」
...しかしそうかと言って虫食いや黴菌(ばいきん)のために変色した葉ばかりを強調した表現主義にも困る...
寺田寅彦 「備忘録」
...取散らした包紙の黴臭(かびくさ)いのは奥の間の縁へほうり出して一ぺん掃除をする...
寺田寅彦 「祭」
...黴(かび)くさい絵を従姉に見せながら...
徳田秋声 「足迹」
...終に肺病の黴菌を貰った...
内藤鳴雪 「鳴雪自叙伝」
...畳の黴(かび)をふき...
中勘助 「島守」
...私は黴(かび)のにおいのする暗い地面に倒れていた...
中島敦 「光と風と夢」
...青白い粉(こ)か黴(かび)が着物にくっついていつまでも落ちないように感ぜられた...
夏目漱石 「行人」
...蟻どもは穀粒などが黴(か)びてすえてくるのを見ると...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...かような人間性の中心となっている黴菌性の流露に外ならないのである...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...黴(かび)くさい夜具であります...
吉川英治 「江戸三国志」
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