...蠅に黴菌を背負わして...
海野十三 「蠅」
...「黴の匂ですか」「そうよ、黴の匂を嗅いで、何か思いだしやしないこと」「べつに、何も」「ないの」「ねえのです」「私は思いだすよ、私は黴の匂を嗅ぐと、娘の時のことを思いだすよ」「へえ」「汝(おまえ)はぼくねんじんね」「へえ」「痴(ばか)ねえ、この人は」「へえ」「いいから」窓の左側になった箪笥(たんす)へ指をやって「あの引抽(ひきだし)を開けておくれよ」「へい」平吉はうごかなかった...
田中貢太郎 「春心」
...天井の低い四畳半の部屋へ入ると突然黴(かび)の臭がムッと鼻を衝いて...
谷崎潤一郎 「The Affair of Two Watches」
...黴(かび)の生えないようにする必要があるという至極平凡なことを...
寺田寅彦 「二科展院展急行瞥見記」
...黴菌類はこれに遇えば皆死んでしまう...
寺田寅彦 「話の種」
...稲の生長を助けるアゾトバクテルという黴菌(ばいきん)がある...
寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
...中には顎下腺炎(がっかせんえん)とかで死んだ祖母(ばあ)さんの手の迹(あと)だという黴(かび)くさい巾着(きんちゃく)などもあった...
徳田秋声 「足迹」
...裏から水を汲んで来て黴(かび)くさい押入れや畳などを拭いていた...
徳田秋声 「黴」
...地震その物よりも沈滓と黴で一杯になつた生活の破壊に怖れを抱かせられるやうになつた...
徳田秋聲 「余震の一夜」
...黴(かび)がはえてるようだった...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...黴を原料として製造せらるゝペニシリンにより...
長岡半太郎 「ノーベル小傳とノーベル賞」
...私は黴(かび)のにおいのする暗い地面に倒れていた...
中島敦 「光と風と夢」
...長崎へ黴菌(ばいきん)の試験に出張するから当分だめだって断わっちまった...
夏目漱石 「三四郎」
...良心とはくさりかかつた腦黴毒性の疾患である...
萩原朔太郎 「散文詩・詩的散文」
...彼はほんとうにこの黴というものの性質を知らないんだろうか? あれは二十四時間以内に発生し枯死するのをもっとも普通の特徴としている多くの菌類のなかの一種だということを...
エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「マリー・ロジェエの怪事件」
...色々な黴菌と同様の恐るべき作用を起す事になる...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...黴菌の少い西洋から湿気のため黴菌の巣窟になっている日本へ...
横光利一 「旅愁」
...黴(かび)が生(は)えるとでも思ってるようだ...
ルナアル Jules Renard 岸田国士訳 「にんじん」
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