...夜明近い鷄の頻りに啼立てるまで...
石川啄木 「天鵞絨」
...鷄の親鳥、ひなどり、合せて、六十羽ばかり飼ひけるが、一匹の、のら猫來りて、ひよつこを奪ひ去ること、前後、十五六羽に及べり...
大町桂月 「猫征伐」
...△流言、強迫、誘惑それで其有樣は實に非常な有樣で、其位に困つて居る所へ以て往つて昨年の八月以來谷中村を買上げると云ふことになりますと云ふと又一層酷いことをやつた、どう云ふことをしたかと申しますと、色々の商人を村へ入れました、是が流言家である、先づ古道具を買ふ商人を村の中に凡そ百人も入れました、道具を賣る、此方では近い中に家を打壞されるさうだから道具を早く賣らなければ安くなるから早く御賣なさい、縣廳で地面を買ひ家は賣るものも賣らぬものも皆打壞すさうだから早く御賣りなさいと云つて、百人も這入つて運動する、それから屋敷の木を御賣りなさい、庭園の楓の木でも梅の木でも櫻の木でも皆薪にして仕舞ふ、斯樣な譯で木を賣れ道具を賣れと云ふ、不都合千萬な話、そこに至つて東京府とか他地方の人民であれば無禮なことを云ふなと申しますが、そこが柔和な人民でがすから木を賣れ道具を賣れと云へば、木や道具を能く賣つて皆屋敷の木を伐つて仕舞ふ、斯樣なことで米もなし食べるものもなし困つて居る所へ、木を賣れと云ふから木を持つて居る者は木を賣る、それが皆運動屋で、鷄も賣れと云ふ、鷄も必要がありますまいから御賣りなさい、船も此處に居なければ要らぬから御賣りなさいと云ふ、種々なる商人を數百人入れてさうして人民を狂亂させて仕舞つた、それから村の中へ七人と云ふ惡黨を入れて是等に非常な流言を放たして、村中を驅け歩いて、人民を騷がして歩く、此商人が色々騷がして歩く爲に人民は發狂した如くなつて居ります、さうなくても三四年食物がなく借金をして居る、金主の方は金貸の方へ内通をして居つて金貸が非常に督促をする、三百代言を何百人と入れてサア寄越せと云ふ、田地を抵當にしても取る人がない、賣らうと云つても買手がない、金融の道を塞ぎ食べるものを奪ひ、堤防は此村には永世築かないと云ふ亂暴なことを書いたものまで――公文書まで發して人民を迷はしたのでがすから、人民が發狂するのも無理はない、殆ど狂人の如くなつて村を逃出す、逃出すに付いて何程でも錢が欲しいと云ふ所へ僅の錢を與へるに過ぎぬ、之が丁度江戸城の亡びます時に私が江戸に居りましたが、旗本なる者が江戸城を逃出して一は比叡山に立籠り、一方は流山邊に逃げて今市日光に戰つて會津へ落ちて往つて死んだ、其時の徳川の爲に忠臣と云ふ人々が此の江戸城を逃出す時の有樣は、旗本何萬人と云ふ者が逃出すに皆家屋敷を持つて居るから、何程家屋敷を錢にしたいと思ふが誰も買ふ者がない、能く此時の有樣に似て居ります、仕方がないから御出入御用商人を呼出して此度脱走して出て往くからなんぼにでも宜いから買つて呉れぬかと云ふ、買つた所がなんだらうが何程にでも宜いから取つて呉れんかと云つて御出入と稱する商人に其殿樣が御辭義をして頼んだ、其時には或は石燈籠のある泉水のある庭園を二十圓三十圓と云ふ金で立派な證文を渡して其金を懷にして逃出した、もう出れば生命はない、戰へば生命の有無を期する筈にいかぬ、其時分の有樣を私は目撃して知つて居りますが、之は戰爭でございます、日本政府は此忠良なる人民を相手にして戰爭をするが如く、八方から水責にし食物を絶ち金融を絶ち、妻子を疲らして遁出す時分に僅なる金を與へて之を買取つたと稱して居る、さうして千五百萬圓からの價のあるものを、僅か四十八萬圓の金を以て奪取る云ふことは現在行れて居るのです...
田中正造 「土地兼併の罪惡」
...『年少誤懷天下憂・時々深夜聞レ鷄起・半生事業何所レ成・抂向二燈前一編二小史一』彼は眞正の文學の偉大を(時代が時代ゆゑ)分らないのである...
土井晩翠 「新詩發生時代の思ひ出」
...鷄卵と砂糖がいるので...
豊島与志雄 「蔵の二階」
...魚肉や鷄肉や野菜は度々だった...
豊島与志雄 「祭りの夜」
...一旦(たん)塒(とや)に就(つ)いた鷄(とり)が餌料(ゑさ)を見(み)てはみんな籃(かご)からばさ/\と飛(と)びおりてこツこツと鳴(な)きながら爪(つめ)で掻(か)つ拂(ぱ)き/\爭(あらそ)うて啄(つゝ)いた...
長塚節 「土」
...どこを風見の鷄(とり)が見てゐるのか冬の日のごろごろとる瘠地の丘で もろこしの葉が吹かれてゐる...
萩原朔太郎 「青猫」
...白い牡鷄わたしは田舍の鷄(にはとり)ですまづしい農家の庭に羽ばたきし垣根をこえてわたしは乾(ひ)からびた小蟲をついばむ...
萩原朔太郎 「青猫」
...白い雄鷄わたしは田舍の鷄(にはとり)ですまづしい農家の庭に羽ばたきし垣根をこえてわたしは乾(ひ)からびた小蟲をついばむ...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...見たこともない鷄介の妻が不憫になつてきて...
林芙美子 「あひびき」
...誰も知らないところで子供を産んだ女の宿命を不憫がつてくれる鷄介のしよげかたを見るのは...
林芙美子 「あひびき」
...子供を丈夫に生む事さへ出來れば、鷄介もいらない...
林芙美子 「あひびき」
...鷄の聲をきくと、お母さんの事を思ひ出すねと、口ぐせに云つてゐたのを妙子はちやんと覺えてゐたのである...
林芙美子 「崩浪亭主人」
...鍋に割下をついで鷄を入れるのは珍らしいことに大吉郎がこまめにしてくれてゐる...
林芙美子 「夜福」
...鷄なら玉子を生むからといふのである...
水野仙子 「白い雌鷄の行方」
...夏のカイノゴ三升が限り五升を出たやら鷄やうたふといふのがある(鹿島郡誌)...
柳田國男 「食料名彙」
...鬪鷄※であるとか...
吉川英治 「折々の記」
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