...こほろぎなどが鳴きしきるのである...
種田山頭火 「其中日記」
...(六日)・おのれにこもる木の実うれてくる・木の葉ひかる雲が秋になりきつた・ゆふ闇はたへがたうして蕎麦の花・明日のあてはない松虫鈴虫・ゆふ焼のうつくしくおもふことなく・秋の夜の鐘のいつまでも鳴る・陽だまりを虫がころげる・青空のした播いて芽生えた・たゞに鳴きしきる虫の一ぴき十月七日曇...
種田山頭火 「其中日記」
...そして鳴きしきる虫の音をきいた...
豊島与志雄 「湯元の秋」
...点滴の音は聞えぬが足駄(あしだ)をはいて女中が郵便を出しにと耳門(くぐり)の戸をあける音と共に重そうな番傘(ばんがさ)をひらく音が鳴きしきる虫の声の中に物淋(ものさび)しく耳についた...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...秋の夜ごとにふけ行く夜半過(やはんすぎ)わけて雨のやんだ後とて庭一面(こおろぎ)の声をかぎりと鳴きしきるのにわたしは眠(ね)つかれぬままそれからそれといろいろの事を考えた...
永井荷風 「雨瀟瀟」
...秋蝉(あきぜみ)の鳴きしきる声は...
永井荷風 「榎物語」
...鳴きしきる虫の叫びの次第に力なく弱って行くのを知りました...
永井荷風 「監獄署の裏」
...西日(にしび)が燃える焔(ほのほ)のやうに狭(せま)い家中(いへぢゆう)へ差込(さしこ)んで来る時分(じぶん)になると鳴きしきる蝉(せみ)の声が一際(ひときは)耳立(みゝだ)つて急(せは)しく聞(きこ)える...
永井荷風 「すみだ川」
...西日が燃える焔のように狭い家中(いえじゅう)へ差込んで来る時分(じぶん)になると鳴きしきる蝉(せみ)の声が一際(ひときわ)耳立(みみだ)って急(せわ)しく聞える...
永井荷風 「すみだ川」
...一時(ひとしきり)鳴く音(ね)を止(とど)めた虫さえも今は二人が睦言(むつごと)を外へは漏(もら)さじと庇(かば)うがように庭一面に鳴きしきる...
永井荷風 「散柳窓夕栄」
...雨ふりそへば猶さらにあかつきかけて鳴きしきる...
永井壮吉 「偏奇館吟草」
...あたり一面に鳴きしきる蟋蟀の聲をきいて...
永井荷風 「蟲の聲」
...ワグネルの音樂のやうに入り亂れて湧立つ如く鳴きしきる...
永井荷風 「蟲の聲」
...夙に須原を發す木曾人の朝草刈らす桑畑にまだ鳴きしきるこほろぎの聲長野々尻間河にのぞみて大樹おほし木曾人よあが田の稻を刈らむ日やとりて焚くらむ栗の強飯(こはいひ)妻籠(つまご)より舊道を辿る...
長塚節 「長塚節歌集 中」
...屋根の上でギイギイギイと鳴きしきる豚達...
三好十郎 「おスミの持参金」
...こおろぎの鳴きしきる芝生の上を...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
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