...餘つた血潮は怖れをなして飛び退いた無數の鱗雲を...
有島武郎 「潮霧」
...空には日に日に鱗雲が流れた...
田中貢太郎 「鮭の祟」
......
富澤赤黄男 「天の狼」
...晴天の青空に浮動する雲につきては一度(ひとたび)も北寿の如くに留意する所なかりき(北斎の絵本『富嶽百景』三巻中には雲を描きしもの尠(すくな)からず殊に初巻快晴の不二の図は鱗雲(うろこぐも)に似たるものを描きて甚(はなはだ)よし然れどもこの絵本は晩年の作にして年代よりいへば北寿の後なるべし)...
永井荷風 「江戸芸術論」
...かゝる夕方に空を仰ぐと冬には決して見られない薄鼠色の鱗雲が名残の夕日に染められたまゝ動かず空一面に浮いてゐて...
永井荷風 「花より雨に」
...簾(すだれ)捲上(まきあ)げし二階の窓に夕栄(ゆうばえ)の鱗雲(うろこぐも)打眺め夕河岸(ゆうがし)の小鰺(こあじ)売行く声聞きつけて俄(にわか)に夕餉(ゆうげ)の仕度待兼(まちかぬ)る心地するも町中なればこそ...
永井荷風 「矢はずぐさ」
...中天を鱗雲が、非常な速さで南から北へ過ぎて行く...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...今日も暑くなり相な鱗雲(うろこぐも)が...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...鱗雲の間から夕陽が細い縞になって...
久生十蘭 「金狼」
...鱗雲の片々が見えたから...
牧野信一 「鬼の門」
...「F村での春」「西瓜喰ふ人」「鱗雲」「山を越えて」「昔の歌留多」「藪のほとり」「雪景色」以上七篇...
牧野信一 「今年発表の作品」
...その避雷針の上を横切る鱗雲(うろこぐも)を凝視していたものであった...
夢野久作 「けむりを吐かぬ煙突」
...空には一面に白い鱗雲(うろこぐも)が漂うて...
夢野久作 「卵」
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