...『さて田圃道を独り帰るに、道すがら、之を見る者は、皆目送して、「鯉なり鯉なり、好き猟(りょう)なり」と、口々に賞讃するにぞ、却つて得意に之を振り廻したれば、哀れ罪なき鯉は、予の名誉心の犠牲に供せられて、嘸(さぞ)眩暈(めんけん)したらんと思ひたりし...
石井研堂 「釣好隠居の懺悔」
...「この鯉はみんな飼つたるのやさかいな...
薄田泣菫 「茶話」
...水が減るに従って大きな鯉が躍りあがったり...
田中貢太郎 「赤い牛」
...油津で同宿したことのある尺八老とまた同宿になつた、髯のお遍路さんは面白い人だ、この人ぐらい釣好きはめつたにあるまい、修行そつちのけ、餌代まで借りて沙魚釣だ、だいぶ釣つて来たが自分では食べない、みんな人々へくれてやるのである、――ずゐぶん興味のある話を聞いた、沙魚の話、鯉の話、目白飯の話、鹿打失敗談、等、等、等――彼はさらに語る、遍路は職業としては二十年後てゐる、云々、彼はチヤームとか宣伝とか盛んにまた新しい語彙を使ふ...
種田山頭火 「行乞記」
...鯉幟の最上品一組を送つた...
土井八枝 「隨筆 藪柑子」
...勾欄(こうらん)の下を繞(めぐ)って流れる水に浮いている鯉(こい)を眺めながら...
徳田秋声 「仮装人物」
...その肴屋と医者とが祝ってくれた鯉(こい)の入れてある盥の前にしゃがんで見たり...
徳田秋声 「黴」
...こんな鯉を手づかみにするとは...
豊島与志雄 「木曾の一平」
...目貫(めぬき)は浪に鯉で金無垢(きんむく)じゃ」主膳はその刀を取って鞘のまま...
中里介山 「大菩薩峠」
...竪川の主(ぬし)の金の鯉の祟りであったとも言い...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...小さくたつて鯉などを鰓(えら)にブラさげたのが露見のもとさ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...鯉を飼つて……」お前が――となると彼は冷たくなつたが...
牧野信一 「好色夢」
...故に今鯉を水に放ちて春水(しゅんすい)四沢に満つる様を見せしむるなりと...
正岡子規 「墨汁一滴」
...南の池に鯉あるべしとて探らせると果してあり...
南方熊楠 「十二支考」
...鯉の味噌汁を産婦に飲ましむれば乳の量を増すと称するは鯉も味噌汁も共に滋養多ければなり...
村井弦斎 「食道楽」
...また鯉を見ていたが...
山本周五郎 「季節のない街」
...鯉のどこかを捉(つか)まえ...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...自分も柄(つか)を鳴らして鯉口をのばしました...
吉川英治 「江戸三国志」
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