...今までの陰惨な気持を振り捨てて晴れ渡った初秋の空の下に遠く拡がる街々の甍(いらか)を見下ろしながら...
大阪圭吉 「デパートの絞刑吏」
...まったく陰惨な倨傲(きょごう)さというの外はなかったのであった...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...陰惨な家全体の中でも殊(こと)に陰気くさく...
橘外男 「棚田裁判長の怪死」
...ラスコウリニコフの部屋のような暗い陰惨な事務室に...
谷譲次 「踊る地平線」
...陰惨な醜い皺もある...
田山録弥 「心の絵」
...幕末勇士などに扮(ふん)した男優の顔はいかなる蛮族の顔よりもグロテスクで陰惨なものであるが...
寺田寅彦 「映画時代」
...「行ってみようか?」そう思うすぐそばから、新聞などで書きたてられている「共産党」というものの、陰惨な、暗いカゲがのしかかってきた...
徳永直 「工場新聞」
...彼は一つ陰惨な瞬きをした...
豊島与志雄 「微笑」
...しだいに弱りゆくその陰惨な雷鳴のごとき響きを...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...陰惨なる時代である...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...その殺戮(さつりく)の陰惨な光景をありのまま語っているのである...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...あなた、まあ、ごらんなさい、この通り」「驚くべきめぐり合わせだな」「全く驚いてしまいます、久助さんが帰ったら、早速聞いてみなければなりません、この着物を、どこでどうして手に入れたか、それをよく問いただしてみましょう」「久助さんには、そんなことはわかるまい」「久助さんに分らないにしても、これを久助さんに渡した人からたずねてみればわかるはずです、わからせずにはおきません」「わからせて、どうするね」「どうするのだといって、先生、こんなものが身につけておられますか」「といって、本人に返してやるわけにもいくまい」「それはそうですけれど……あんまり因縁(いんねん)も過ぎますからね、何とかしなければ、あのおばさんの恨みが、どこまでついて廻るか知れません」「恨みが消えないのだ」「いいえ、わたしは、あのおばさんに恨まれるようなことは、決してしてはおりません、もし、わたしたちについて廻っているとすれば、あのイヤなおばさんは、死際(しにぎわ)に、何かわたしたちに思い残すことがあって、それを言いたいがために附いて廻るのかもしれません」「そんなことかも知れぬ」「そうだとすれば……わたし、変な気になってしまいます、イヤなおばさんはイヤなおばさんに違いないけれど、わたしに対して、何もイヤなことをしたわけじゃなし、わたしを贔屓(ひいき)にして、ずいぶん可愛がってくれたおばさんなのではなかったか知ら……」四十一お雪ちゃんは、ここでなんだか今までの無気味な、陰惨な気分が、どうやらあわれみの心に変ってゆくように、自分ながら気が引けてならなくなりました...
中里介山 「大菩薩峠」
...陰惨な、そのくせ妙に陽気な、言いようもない不思議な花の山です...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...ぐつたり横はつてゐる姿は文楽か何かの陰惨な人形のやうであつた...
原民喜 「廃墟から」
...暗い小庭と不潔な露地(ろじ)が網の目のように入りこんでいる陰惨な一劃(いっかく)である...
牧逸馬 「女肉を料理する男」
...ああ何と云う悲しい陰惨な計略!私は闇を歩き乍ら...
松永延造 「職工と微笑」
...斯くも陰惨な外囲の中で...
松永延造 「職工と微笑」
...棺台と陰惨な葬式と...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ヴェニスに死す」
便利!手書き漢字入力検索