...其板に触れた響は、深い高い音を、打たれた時に「無」が発する戦慄すべき音を、陰々と反響した...
テオフィル・ゴーチエ Theophile Gautier 芥川龍之介訳 「クラリモンド」
...そつと物陰(ものかげ)から覗いて見ると必ず陰々として靈狐の姿が...
芥川龍之介 「地獄變」
...先月の半ば頃一日(あるひ)晩方の事……」この時座敷寂(しん)として由井が浜風陰々たり...
泉鏡花 「活人形」
...靄(もや)の曇りで陰々としている...
泉鏡花 「開扉一妖帖」
...光陰々(そうそう)電気の鉄線を走るよりも急なり...
徳富蘇峰 「将来の日本」
...その路の隈々には人間の白っぽい骨が陰々と横わっている...
原民喜 「苦しく美しき夏」
...あとの残りは大森駅の階段を陰々と昇つて行く...
原民喜 「氷花」
...陰々として草木が密生する地上を爬虫類のみが徒らに跳梁する光景が残されるばかりではあるまいか...
原民喜 「平和への意志」
...今の件を一つたのむ」真名古は陰々たる声で...
久生十蘭 「魔都」
...バルチック艦隊の煙が沖に見えたといふやうな風説で町は依然不安の渦が陰々として居り...
牧野信一 「サクラの花びら」
...不気味な音が陰々と木立の間を縫つて行くと...
牧野信一 「ピエル・フオン訪問記」
...太く物凄い九郎の喚声ばかりが陰々と響き渡つてゐた...
牧野信一 「鎧の挿話」
...陰々と開業された...
山本周五郎 「ゆうれい貸屋」
...四更(こう)の頃になると作兵衛滝(さくべえだき)の鳴(な)りが止まって陰々たる人の囁きが聞こえる事があると...
吉川英治 「江戸三国志」
...どこにも陰々たる喪(も)の影は見えなかった...
吉川英治 「三国志」
...こういう情景には人いちばい陰々滅々な感を深くして...
吉川英治 「私本太平記」
...陰々滅々(いんいんめつめつ)と谺(こだま)する犬の声をかぞえるように聴き耳をたてていた...
吉川英治 「宮本武蔵」
...谺(こだま)が声をよび、声が谺をよび、陰々と、その吠えたけびは、止まなかった...
吉川英治 「宮本武蔵」
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