...まだ鐚(びた)一文も...
海野十三 「雷」
...鐚一文(びたいちもん)だってやりはせん...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...浅間しくないんだね!……私もうお前さんから鐚一文だって貰やしない...
豊島与志雄 「神棚」
...「びた公!」と言った神尾の権幕の変っているのに思わずゾッとした鐚助は...
中里介山 「大菩薩峠」
...鐚が後ろへひっくり返ると共に...
中里介山 「大菩薩峠」
...鐚は鐚で休息させて置いて...
中里介山 「大菩薩峠」
...例の鐚(びた)であります...
中里介山 「大菩薩峠」
...さて、鐚儀(びたぎ)、今日の推参の次第と申しまするは、決して色の酒のと野暮(やぼ)な諫言立(かんげんだ)てのためにあらず――近来稀れなる風流の御相談を兼ねて参じやした」「風流――風通(ふうつう)の間違いだろう、風通の一枚もこしらえたいが、銭がねえというところだろう」主膳も、いささかアクドイ応酬を致しましたが、鐚に於ては洒唖乎(しゃああ)たるもので、「どう致しやして、衣食足って礼節を知る、古人はいいところを言いやした、鐚儀が不肖ながら食物は今朝アブ玉で、とんとお腹いっぱいこしらえて参じやした、食の方は事足りて余りあり、衣の方に於きましては、これごらんあそばせ、上着が空色の熨斗目(のしめ)で日暮方という代物(しろもの)、昼時分という鳶八丈(とびはちじょう)の取合せが乙じゃあございませんか...
中里介山 「大菩薩峠」
...あなた、三一旦那は定家卿(ていかきょう)でも、飛鳥井大納言(あすかいだいなごん)でもございません、そう、殿様のように頭からケシ飛ばしてしまっては、風流というものが成り立ちません、第一、初心のはげみになりませんから、何とか一つ、そこは花を持たせていただきてえもんでござんして」「黙れ黙れ! 言語道断の代物だ――笑って済むだけならまだいいが、見て嘔吐(へど)が出る、ことに、第五句のところ……」「そこでげす!」「そこが、どうした」「鐚がそこを賞(ほ)めやしたところが、ことごとくお大尽のお気にかないました」「馬鹿野郎!」「これは重ね重ねお手厳しい、そういちいち、馬鹿の、はっつけのと、あくたいずくめにおっしゃっては、風流が泣くではございませんか、第一殿様の御人体(ごにんてい)にかかわります、お静かにおっしゃっていただきてえ」「その第五句の南面という言葉がはなはだ穏かでない、町人風情のかりそめにも用うべからざる語だ」「へえそんなたいそうな文句を引張り出したんでげすか」「南面というのは天子に限るのだ、この文句で見ると、三一旦那なるものは、何か蒸気船に乗って南の方へでも出て行く門出のつもりで、こいつを唸(うな)り出したものだろうが、南面して行くとは、フザケた言い方だ、勿体ないホザき方だ――ただ笑うだけでは済まされない、不敬な奴だ!」「へえ――大変なことになりましたな」「これ、ここへ出ろ、鐚、おれはこう見えても――物の分際ということにはやかましい、痩(や)せても枯れても神尾主膳は神尾主膳だ、鐚は鐚助――三一風情がドコへ行こうと、こっちは知ったことではないが、南面して行くとホザいたその僭越が憎い! おれは忠義道徳を看板にするのは嫌いだが、身知らずの成上り者めには癇癪が破裂する、よこせ!」と言って神尾主膳は、鐚の油断している手から大事の短冊をもぎ取って、寸々(ずたずた)に引裂いて火鉢の中へくべてしまい、「あっ!」と驚いて、我知らず火鉢の中をのぞき込む鐚の横っ面を、イヤというほど、「ピシャリ」「あっ!」鐚助、みるみる腫(は)れ上る頬っぺたを押えて、横っ飛びに飛んで玄関から走り出しました...
中里介山 「大菩薩峠」
...鐚(びた)は、とつ、おいつ、こんなことを言って、自宅にくすぶって気を腐らせていると、溝板(どぶいた)を荒々しく蹴鳴らして、「鐚公、いるか」その声は、まさしく木口勘兵衛尉源丁馬...
中里介山 「大菩薩峠」
...ガラリと腰高障子を引きあけた木口勘兵衛尉源丁馬は、朱鞘(しゅざや)の大小の、ことにイカついのを差しおろし、高山彦九郎もどきの大きな包を背負い込んで、割鍋を叩くような大昔を振立て、「鐚、いたな、今日はひとつ、てめえに膝詰談判に来たんだが、このお爺(とっ)さんをひとつ、芸娼院の人別に入れてくんな、これは木曾の藤兄(ふじあに)いといって、姪(めい)を孕(はら)ませて子まで産ませて追ん出した上に、それを板下(はんした)に書いて売出した当代の甘いおやじさんだ、文書きの方では古顔なんだが、近ごろ拙者の子分同様になりやんした、よろしく頼む」高飛車に出られたので、鐚もあっけに取られていると、「さあ、お爺(とっ)さん、こっちへ来て、芸娼院の人別に入れてもらいねえよ、これがお安いところの鐚公というおっちょこちょいだ、お見知り置きなせえ」と言うから、鐚が木口の後ろを見ると、いかにも人のよさそうな老爺(おやじ)が一人、なべーんとした面(かお)をして、しょんぼりと控えている...
中里介山 「大菩薩峠」
...全く思ひ付きだ」「へエ――」「青錢や鐚錢(びたせん)を小粒に變へたのも...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...鐚(びた)一枚出て来ません...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...鐚(びた)一文も不審な金はございません」どこで聽いてゐたか...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...鐚(びた)一文欲しゅうはないよ」「そんなら...
火野葦平 「花と龍」
...鐚一文(びたいちもん)も入っちゃいませんでしたよ」「あとで泥を吐いたら承知せんぞ」警部の声が大きくなった...
森下雨村 「五階の窓」
...値が下がった鐚銭(びたせん)でも...
吉川英治 「私本太平記」
...いまの餅屋のおつりのうちから鐚銭(びたせん)を一枚なげて...
吉川英治 「神州天馬侠」
便利!手書き漢字入力検索
この漢字は何でしょう??