...そんな折にも鐚銭(びたせん)一つ持合さないのが何よりの自慢らしい...
薄田泣菫 「茶話」
...フョードル・パーヴロヴィッチにも鐚一文(びたいちもん)とることができなかった...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...鐚一文(びたいちもん)だってやりはせん...
ドストエーフスキイ 中山省三郎訳 「カラマゾフの兄弟」
...のだいこのような鐚助(びたすけ)(本名金助)という男で...
中里介山 「大菩薩峠」
...鐚助夙(つと)に承っておりまするでげす」意外にも神尾は...
中里介山 「大菩薩峠」
...いけやせん」と鐚は扇子を斜(しゃ)に構え...
中里介山 「大菩薩峠」
...「鐚(びた)が――そそのかしに行ったはずだ」と同人の一人がまた言いました...
中里介山 「大菩薩峠」
...あなた、三一旦那は定家卿(ていかきょう)でも、飛鳥井大納言(あすかいだいなごん)でもございません、そう、殿様のように頭からケシ飛ばしてしまっては、風流というものが成り立ちません、第一、初心のはげみになりませんから、何とか一つ、そこは花を持たせていただきてえもんでござんして」「黙れ黙れ! 言語道断の代物だ――笑って済むだけならまだいいが、見て嘔吐(へど)が出る、ことに、第五句のところ……」「そこでげす!」「そこが、どうした」「鐚がそこを賞(ほ)めやしたところが、ことごとくお大尽のお気にかないました」「馬鹿野郎!」「これは重ね重ねお手厳しい、そういちいち、馬鹿の、はっつけのと、あくたいずくめにおっしゃっては、風流が泣くではございませんか、第一殿様の御人体(ごにんてい)にかかわります、お静かにおっしゃっていただきてえ」「その第五句の南面という言葉がはなはだ穏かでない、町人風情のかりそめにも用うべからざる語だ」「へえそんなたいそうな文句を引張り出したんでげすか」「南面というのは天子に限るのだ、この文句で見ると、三一旦那なるものは、何か蒸気船に乗って南の方へでも出て行く門出のつもりで、こいつを唸(うな)り出したものだろうが、南面して行くとは、フザケた言い方だ、勿体ないホザき方だ――ただ笑うだけでは済まされない、不敬な奴だ!」「へえ――大変なことになりましたな」「これ、ここへ出ろ、鐚、おれはこう見えても――物の分際ということにはやかましい、痩(や)せても枯れても神尾主膳は神尾主膳だ、鐚は鐚助――三一風情がドコへ行こうと、こっちは知ったことではないが、南面して行くとホザいたその僭越が憎い! おれは忠義道徳を看板にするのは嫌いだが、身知らずの成上り者めには癇癪が破裂する、よこせ!」と言って神尾主膳は、鐚の油断している手から大事の短冊をもぎ取って、寸々(ずたずた)に引裂いて火鉢の中へくべてしまい、「あっ!」と驚いて、我知らず火鉢の中をのぞき込む鐚の横っ面を、イヤというほど、「ピシャリ」「あっ!」鐚助、みるみる腫(は)れ上る頬っぺたを押えて、横っ飛びに飛んで玄関から走り出しました...
中里介山 「大菩薩峠」
...鐚としては、せっかくのヒットたる芸娼院の方も、開店休業の姿だから、なんとかせねばなるまいが、いやはや、手をつけてみると、そのややこしいこと、それで少々気を腐らせているという次第です...
中里介山 「大菩薩峠」
...何しろ青銭や鐚銭を...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...鐚銭(びたせん)一枚その辺りには見付かりません...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...鐚(びた)一枚出て来ません...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...鐚銭一枚も出ては来なかったのです...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...伊太郎が百も持っちゃいないだろう」「フーム」「小判はおろか鐚銭(びたせん)一枚入った財布を持っちゃいない...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...鐚(びた)一文も不審な金はございません」どこで聽いてゐたか...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...鐚(びた)一文も不審な金はございません」どこで聴いていたか...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...自分のものは鐚一文持つちや居ません...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...金はもう一枚の鐚(びた)も持っていないのだ...
吉川英治 「宮本武蔵」
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