...看護婦が帽子を髪にとめるための長い帽子ピン、天井の張ってない湯殿(ゆどの)の梁(はり)、看護婦室に薄赤い色をして金(かな)だらいにたたえられた昇汞水(しょうこうすい)、腐敗した牛乳、剃刀(かみそり)、鋏(はさみ)、夜ふけなどに上野(うえの)のほうから聞こえて来る汽車の音、病室からながめられる生理学教室の三階の窓、密閉された部屋(へや)、しごき帯、……なんでもかでもが自分の肉を喰(は)む毒蛇(どくじゃ)のごとく鎌首(かまくび)を立てて自分を待ち伏せしているように思えた...
有島武郎 「或る女」
...抜萃(きりぬき)に使ふ鋏を逆手に握つて...
石川啄木 「菊池君」
...で、そのまま帰ると、直ぐに近所の鋏(はさみ)の処(ところ)え参り、(三)鋏君、申兼(もうしかね)たが今夜一ト晩、君の体を貸してくれまいか...
巖谷小波 「三角と四角」
...鋏(はさみ)を手に持ったまま...
海野十三 「火星兵団」
...千二の鋏のつかいかたに...
海野十三 「火星兵団」
...紙包をあけると中に色がみを鋏(はさみ)で切つた模様風の美しい紙細工が大切さうに仕舞つてあつた...
高村光太郎 「智恵子抄」
...細君の両手は鋏を持つた京子の手にかかつた...
田中貢太郎 「あかんぼの首」
...鋏でつまみ立てたやうな鼻髭だのを一分とは永く見てゐられなかつた...
田畑修一郎 「医師高間房一氏」
...私の求める鋏(はさみ)はただ二つ...
寺田寅彦 「芝刈り」
...固いこちこちの皮を握鋏で切るのだから...
豊島与志雄 「公孫樹」
...鋏はかちゃりと床(ゆか)の上に落ちた...
夏目漱石 「虞美人草」
...店先の硝子箱にはいつた鋏に眼をとめた...
林芙美子 「屋久島紀行」
...私が鋏(はさみ)を持て行(いっ)てひょいと引捕(ひっつかま)えた所が...
福澤諭吉 「福翁自伝」
...その時一人の少年が鋏を持つて来て...
牧野信一 「雛菊と雲雀と少年の話」
...中年男と若い女にも此の場の様子がわかって来る)百姓 へえ! なんたらチャッケエ鋏だあ!(讃嘆の叫び声)青年 ハハ...
三好十郎 「おりき」
...鋏(はさみ)と櫛(くし)の箱の蓋(ふた)を僧都の前へ出すと...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...色紙に鋏して造られたやうな東京の町なみの姿が...
室生犀星 「故郷を辞す」
...家婦は予に爪を切る鋏を貸すことを断わった...
山本周五郎 「青べか日記」
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