...絶えず彼の懐ろの中に鋼鉄色の表紙をした「ツアラトストラ」を感じてゐた...
芥川龍之介 「大導寺信輔の半生」
...麦藁帽子にも鉄色の絽の羽織の肩のあたりにも雨の水が光つてゐた...
田中貢太郎 「蛾」
...その形付をする男が傍の濁つた溝のやうな鉄色をした川で...
田山録弥 「百日紅」
...切れて落ちた鋼鉄色(こうてついろ)の尾の一片は...
徳冨健次郎 「みみずのたはこと」
...彼は鉄色の炎熱に霞んだ家畜を視た...
豊島与志雄 「現代小説展望」
...周囲(まわり)は鉄色に近い藍(あい)で...
夏目漱石 「草枕」
...鉄色の手にはたしかに覚えがあった...
林芙美子 「新版 放浪記」
...鉄色のズボンに包まれている脚をベッドの上に投げ出して...
フランツ・カフカ Franz Kafka 原田義人訳 「火夫」
...三千万年の前に死滅してしまったこの火山は、どの岩もみな古めかしく、縄状熔岩(パフエーフエー)がいたるところで縄のように捩(ねじ)れあい、黒や鉄色や、赤味がかった岩が、垂直に無限の闇黒のなかへ逆落しになっていた...
久生十蘭 「地底獣国」
...鉄色無地の羽二重(はぶたえ)の着流し姿に...
三上於兎吉 「艶容万年若衆」
...この頃は鋼鉄色になりはじめた欅の梢など眺めながら電車を待ってのって...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...血も涙もない鋼鉄色の瞳をギラギラさせる...
夢野久作 「怪夢」
...鋼鉄色の大空を凝視していた...
夢野久作 「戦場」
...他の処と同様に鉄色の繻子(しゅす)であった...
夢野久作 「暗黒公使」
...今日に限つて特別に阿母さんの身体(からだ)が鉄色の銚子縮(てうしちヾみ)の単衣(ひとへ)の下に...
與謝野寛 「蓬生」
...腕は千斤も吊るべしと思われる鉄色の肌をしている...
吉川英治 「三国志」
...どんなに跡を探していたか知れやしねえ」何か一物(もつ)ありそうなお十夜――あのそぼろ助広の鉄色(かねいろ)のようにトロリとした眼でお綱を視(み)る……...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...深みのある鉄色(かねいろ)の烈しさと...
吉川英治 「鳴門秘帖」
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