...それからその上に載っている父親の遺愛の松の盆栽――すべてがある古い新しさを感じさせる...
芥川龍之介 「開化の良人」
...中尉遺愛のツワィス望遠鏡とロンジン夜光時計とだけは...
橘外男 「ウニデス潮流の彼方」
...両替商初代山城屋久兵衛遺愛の重宝にしたところで...
辰野九紫 「青バスの女」
...調度はそれが亡き父親の遺愛の品々であるだけに...
谷崎潤一郎 「細雪」
...正面の床の間には父が遺愛の備前兼光(びぜんかねみつ)の一刀を飾り...
徳冨蘆花 「小説 不如帰」
...特別の遺愛の品とてないので...
豊島与志雄 「霧の中」
...わたしは病後の余生を送るに必須な調度と蔵書の一部のみを残してその他のものは庫の中に蔵した先人遺愛の書画骨董から庭の盆栽に至るまで...
永井荷風 「写況雑記」
...来青閣に隠れ住みて先考遺愛の書画を友として...
永井荷風 「断腸亭日乗」
...私は先生遺愛の硯(すずり)を乞い受け...
牧野富太郎 「牧野富太郎自叙伝」
...亡悟道軒円玉はまたその先君が両国の水茶屋で前出の河内山遺愛の娘とく女と馴染み...
正岡容 「下谷練塀小路」
...いよいよ父宮の遺愛の宇治の山荘を離れて行くことになるのかと中の君は心細くて歎かればかりする...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...遺愛の御柳だけは常におる室(しつ)に近い地に栽(う)え替えさせた...
森鴎外 「渋江抽斎」
...抽斎父子の遺愛の木たる柳(ていりゅう)がある...
森鴎外 「渋江抽斎」
...亡くなった母の遺愛の品ということで...
山本周五郎 「日本婦道記」
...この翁の遺愛の本は現在神奈川県茅ヶ崎の野中家に保存して在る筈である...
夢野久作 「梅津只圓翁伝」
...俺は南洲の遺愛の机の上に在る大塩平八郎の洗心洞記(せんしんどうさつき)を引っ掴んで懐中(ふところ)に入れて来た...
夢野久作 「近世快人伝」
...また、その遺愛の駒が、長距離を疾驅して、汗しとゞにまみれつゝ、頸に榮冠の花輪を授けられ、どよめく群集の前を、なほ醒めぬ悍氣にたけりながら、緑地を一巡するのを見てゐたら、私は今からもう春愁に耐へ難い氣がしてならない...
吉川英治 「折々の記」
...関羽が遺愛の有名なる偃月(えんげつ)の青龍刀だ...
吉川英治 「三国志」
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