...夫人は山の姿も見ず、松も見ず、松の梢(こずえ)に寄る浪の、沖の景色にも目は遣(や)らず、瞳を恍惚(うっとり)見据えるまで、一心に車夫部屋の灯(ともし)を、遥(はるか)に、船の夢の、燈台と力にしつつ、手を遣ると、……柄杓(ひしゃく)に障(さわ)らぬ...
泉鏡花 「悪獣篇」
...「虚子が東京で雑誌を遣るそうであるが...
高浜虚子 「子規居士と余」
...「けれども子供にだけは月に一二度位は食はせて遣ることにせうかねえ」と思ひ入つたやうに言つた...
高濱虚子 「續俳諧師」
...零落した昔しの養い親を引き取って死水(しにみず)を取って遣る事も出来たろう」黙ってこう考えた健三の腹の中は誰も知る者がなかった...
夏目漱石 「道草」
...仕方が無い遣る處までやるさ...
樋口一葉 「たけくらべ」
...お登和嬢は大原のナイフを持ちて骨付の肉を剥(そ)がんとするを見「大原さんその肉はお箸(はし)でおちぎりなすっても取れますよ」と教えて遣る...
村井弦斎 「食道楽」
...そこで一同ワシリの脱獄を幇助して遣る事に決議した...
コロレンコ Vladimir Galaktionovick Korolenko 森林太郎訳 「樺太脱獄記」
...改年後始めて遣る手紙にくやみを書いたのは...
森鴎外 「壽阿彌の手紙」
...年寄は子供に指さしをして見せて遣る...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...己の目の見遣るあそこに...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...初は盛んに、押強(おしつよ)く遣ったが、今では賢く、落ち著いて遣る...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...救って遣るのがむずかしいのです...
Johann Wolfgang von Goethe 森鴎外訳 「ファウスト」
...自分のまはりを飛び廻つてゐる鳩に穀物を蒔いて遣るのが面白いと云つた...
アンリ・ド・レニエエ Henri de Regnier 森林太郎訳 「復讐」
...それに入れて遣るとすぐに持って帰る...
柳田国男 「山の人生」
...遣る瀬のない思いに胸をときめかせながら...
夢野久作 「押絵の奇蹟」
...……今に見てろ、源次が遣るぞ...
夢野久作 「斜坑」
...「お釣銭(つり)はお前に遣る」と云ううちに帽子を掴んで表に飛び出しかけたが又立ち止まってボーイを振り返った...
夢野久作 「暗黒公使」
...俺が大将になって遣るから貴様は退(の)け...
夢野久作 「ビール会社征伐」
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