...いのちの小鼓(こつづみ)の鳴の遠音(とほね)とひびき寄す...
石川啄木 「詩」
...霞むやうな銀の鈴の遠音(とほね)の断続...
大手拓次 「「香水の表情」に就いて」
...それを天の遠音のせゐだとしてゐるのは...
薄田泣菫 「独楽園」
...有名な「古池やかわず飛び込む水の音」はもちろんであるが「灰汁桶(あくおけ)のしずくやみけりきりぎりす」「芭蕉(ばしょう)野分(のわき)して盥(たらい)に雨を聞く夜かな」「鉄砲の遠音に曇る卯月(うづき)かな」等枚挙すれば限りはない...
寺田寅彦 「映画芸術」
...その他『鉄砲の遠音』の巻に「なまぬる一つ」と「碁いさかい二人」と続くような例ははなはだ多い...
寺田寅彦 「連句雑俎」
...すぐ前の竹藪(たけやぶ)にひびいて遠音(とおね)ながら手にとるようです...
中里介山 「大菩薩峠」
...阿漕(あこぎ)ヶ浦(うら)で鳴く千鳥が遠音(とおね)に聞こえるくらいのものでありました...
中里介山 「大菩薩峠」
...遠音(とおね)にその音を聞くと...
中里介山 「大菩薩峠」
...その遠音の囃子(はやし)を一層おそれたものです...
中里介山 「大菩薩峠」
...同じくこの囃子の遠音に耳をそばだてました...
中里介山 「大菩薩峠」
...不破の関で鈴慕の曲を遠音に聞いて...
中里介山 「大菩薩峠」
...遠音の伴奏に合わせてうたい出したが...
中里介山 「大菩薩峠」
...しかも、その静寂の奥に、なお声あり! はるか早川の、早瀬のむせびか、峰々にからむ風の唸りか、はた冴えまさる氷雪のきしり、あるいは樹々の身じろぎ、鳥獣の寝息……いやいやそれよりも、つつましい寒山の静寂、自身のうそぶきとも、ただしは人の心の……何か知らず、鋭い針めいて、しんしん、きんきん、と乱れひらめく、幽(か)そけくも底力ある、あやしい調べが、忍びやかに脳底に刺し徹(とお)る……声やあらぬ雪つむ山の夜半の声時に、風が持てくる、太皷の遠音...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...街の遠音を夢心地に聽き乍ら...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...辰刻(いつゝ)(八時)過ぎになると、江戸の下町ではもう、羽子の遠音も、紙鳶(たこ)の唸りも聞えます...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
......
三好達治 「駱駝の瘤にまたがつて」
...市十郎は、夢うつつに、糸の遠音を、寝床の中で聞いていた...
吉川英治 「大岡越前」
...三味(さみ)の遠音(とおね)や色町の夜を外にして深い思案に落ちている...
吉川英治 「鳴門秘帖」
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