...しかしこれを辛抱づよく傍聴していた係官たちは...
海野十三 「地獄の使者」
...ただ辛抱づよく働き...
リットン・ストレチー Lytton Strachey 片岡鉄兵訳 「エリザベスとエセックス」
...さういふ粗野な現實に辛抱づよく耐へてゐる君の姿が手紙のうちにもだんだんしつかりして來るやうに見えるので...
堀辰雄 「夏の手紙」
...売ってもいいだが」私は辛抱づよく待った...
山本周五郎 「青べか物語」
...聴診器を当てたまま辛抱づよくようすをみてただよ...
山本周五郎 「青べか物語」
...「あんたも強くなって頂戴、やけになったり諦(あきら)めたりしないで、辛抱づよく、一寸刻みでもいい貧乏からぬけるくふうをして頂戴、……そしていいお嫁さんを貰って、仕合せに」「おれがいい嫁を貰うって」宇之吉はかすれ声で叫ぶように云った、「――じゃおけいちゃんは、おれに待っていろとは云わねえのか」「だって宇之さん、あたしきれいな躰じゃなくなるのよ」「そんなことがなんだ、それが悪いんなら罪の半分はおれにある、おれに甲斐性(かいしょう)があればおめえにそんな悲しい思いをさせずに済んだんだ、おれあおめえのほかに嫁なんぞ貰おうとは思わねえ」「宇之さん」おけいは握っていた彼の手を自分の胸へ押しつけ、喘(あえ)ぐように叫んで身をすり寄せた...
山本周五郎 「追いついた夢」
...妹が着替えにかかったところでしたね」「そうだ」と千之助は辛抱づよく頷いた...
山本周五郎 「五瓣の椿」
...「どんな店が持てるかわからねえが、二人でいっしょに住み、おめえの仕込んだ糊でおれが表具でも経師でも、立派な仕事をしてみせる、お互いにいつか女房をもらうだろう、そして子供もできるだろうが、それからも二人ははなれやしねえ」と栄二はひそめた声に感情をこめて云った、「――いつまでも二人でいっしょにやっていって、芳古堂に負けねえ江戸一番の店に仕上げるんだ、おれはこう考えているんだが、おめえはどう思う、おれとやるのはいやか」さぶは考えてみてから首を振った、「だめだ、そう思ってくれるのは有難(ありがて)えが、おら、おめえの重荷になるばかりだ」二の四「またそれだ、それがおめえのいちばん悪い癖だぜ、さぶ」と栄二が云った、「二人で店をやってゆくのに、どうしておめえが重荷になるんだ、おめえは誰にもひけをとらねえ立派な糊を作る、その糊でおれが仕事をする、おれたち二人の力を合わせてやるのに、重荷もへちまもねえじゃねえか」さぶは吃(ども)った、「おら、思うんだが」「よせったら」「それでもおら、思うんだ」とさぶはねばりづよく云った、「おのぶのことだってそうだが、おれがいくじなしなために、栄ちゃんにとんでもねえ迷惑をかけちまった」「おれが迷惑だなんて云ったか」「おめえはなんにも云やあしねえ、いつだってなんにも云やあしねえ、けれどもそれだけよけいに、おら自分のいくじなしがやりきれなくなるんだ」と云ってさぶは暗がりの中でさぐるように栄二を見た、「――覚えているかい、栄ちゃん、十五のとしの冬だっけ、おれが店をとびだしたとき、おめえは雨に濡れながら追っかけて来た、横網河岸まで追っかけて来て、おれを伴れ戻してくれたことがあった」「おめえだって雨に濡れてたぜ」「おら、あのことは一生忘れねえが、伴れ戻される途中ずっと一つことを考えてた、おら、このままだときっと、栄ちゃんの厄介者になるだろうって、いつも栄ちゃんに面倒をかけて困らせるこったろうってな」「おれも正直に云おう」と栄二が深く息を吸いこんで、大きく吐きだしてから云った、「――おめえはな、さぶ、おれにとっては厄介者どころか、いつも気持を支えてくれる大事な友達なんだ、正直に云うから怒らねえでくれよ、おめえはみんなからぐずと云われ、ぬけてるなどとも云われながら、辛抱づよく、黙って、石についた苔みてえに、しっかりと自分の仕事にとりついてきた、おらあその姿を見るたびに、心の中で自分に云いきかせたもんだ、――これが本当の職人根性ってもんだ、ってな」「やい、いいかげんにしろ」と二人のうしろでどなる声がした、「なんの相談か知らねえが、こっちはいいかげん待ちくたびれたぜ、二人とも立ったらどうだ」栄二とさぶが振り向いた...
山本周五郎 「さぶ」
...辛抱づよく機の熟するのを待つ場合とがある」と岡安は心のこもった口ぶりで云った...
山本周五郎 「さぶ」
...老人は辛抱づよく...
山本周五郎 「ちくしょう谷」
...やはり辛抱づよくついて来て...
山本周五郎 「橋の下」
...康二郎は用心ぶかいうえに辛抱づよくって...
山本周五郎 「ひとでなし」
...ずいぶん辛抱づよく云いよるんだけれど...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...「私はすっかりあのことに騙され、あのことなしには済ませなくなった」と新八は云った、「すると、急におまえがいなくなった、とつぜん屋敷奉公にあがって、ごくたまにしか帰ってこない、それでも、そのままならまだよかったかもしれないが、宿さがりのたびにあのことをしいる、忘れかかるころになると、おまえは帰って来て、私を飽きるまで自由にする、そしてまた屋敷へ戻っていってしまうんだ、私はどうすればいい、すっかり馴れてしまって、あのことが欲しくなって、自分で自分をどうしようもなくなることがある、だが、おまえはいない、おまえは手の届かない遠いところへいってしまってるんだ、――おまえがまだ材木河岸にいるじぶんから、お久米は私にさそいかけた、私はみむきもしなかった、だがお久米は諦(あきら)めなかった、辛抱づよく、暇さえあればさそいかけた、私のがまんにだって限りがある、自分をいやらしく思いながら、そのことに馴れてしまった躯が承知しない、私はとうとう負けた、負けないわけがないじゃないか、おまえにもそれはわかるだろうし、そのことで私を責めるわけにはいかない筈だ」「ええそう、そのとおりよ」おみやは泣きながら頷いた、「みんな新さんの云うとおり、悪いのはあたしよ」「泣くのはよしてくれ」「ええ泣かないわ」おみやは涙を拭いた、「新さんに云われて、初めてわかった、あたしはただ新さんが好きで、可愛くって、どうしてもそうならずにはいられなかったの」「本当にこのおれが好きなら、女はもっと違ったことをする筈だ、私はまだ十六にしかなっていなかったんだぜ」「でもあたしは、そうするよりほかにどうしようもなかったの、あなたの年のことも、そんなふうにしていいか悪いかということも、なんにも考えられないほど夢中だったわ」「おまえはただそのことだけが好きなんだ、相手はおれでなくったって、誰だってよかったんだ」「いいえ違う、それだけは違う、あたしがそんな夢中になったのは新さんだからよ」「そう云えば私がよろこぶとでも思うのか」「いいえ、あやまるだけよ」とおみやはまた泣きだした、「あたしはなにもかもわからなくなるほど新さんが好きだったのに、そのために却って新さんを悪くしてしまった、そう思うとあたしどうしていいかわからない」「泣くのはよせというんだ」「云ってちょうだい、あたしどうしたらいいの、新さん」おみやは泣きながら云った、「どうしたら罪が償えるか云ってちょうだい、あたしあなたの云うとおりにするわ」「わけはないさ」と新八が云った、「別れるだけだ」「別れるって」おみやはぎょっとしたように彼を見た...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...辛抱づよくなにごとかを待っているという風な姿勢をみると...
山本周五郎 「柳橋物語」
...そう遠くない物蔭から、辛抱づよく、あの細い眼で、じっとこっちを覘(うかが)っている...
山本周五郎 「夕靄の中」
...辛抱づよく立つてゐた...
吉川英治 「折々の記」
...だがなお、敵を思う地点へおびき込むまでは、正成の本隊以下、辛抱づよく、天王寺附近に旗を伏せていたのである...
吉川英治 「私本太平記」
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