...あらゆる人の嬉しげに、楽しげに、をかしげに顔色の見え候に、小生はさて置きて夫人のみあはれに悄(しお)れて見え候は、人いきりにやのぼせたまひしと案じられ、近う寄り声をかけて、もの問はむと存じ候折から、おツといふ声、人なだれを打つて立騒ぎ、悲鳴をあげて逃げ惑ふ女たちは、水車の歯にかかりて撥(は)ね飛ばされ候やう、倒れては遁(に)げ、転びては遁げ、うづまいて来る大蜈蚣(むかで)のぐるぐると巻き込むる環のなかをこぼれ出で候が、令閨(れいけい)とおよび五三人はその中心になりて、十重二十重(とえはたえ)に巻きこまれ、遁(のが)るる隙(ひま)なく伏(ふし)まろび候ひし...
泉鏡花 「凱旋祭」
...台座に可成(かなり)大きな石が使ってあるので、転びもせずに、幾年月を、元の位置に立尽していたものであろう...
江戸川乱歩 「孤島の鬼」
...椅子は転び、卓子(テーブル)はいざって、その上に置いてあったらしい大きなボール紙の玩具箱は、長椅子の前の床の上にはね飛ばされ、濡れて踏みつぶされて、中から投げ出された玩具の汽車やマスコットや、大きな美しい独楽(こま)などが、同じように飛び出したキャラメルや、ボンボン、チョコレートの動物などに入れ混って散乱し、そこにも小さな主人を見失った玩具達の間の抜けたあどけなさが漂っていた...
大阪圭吉 「寒の夜晴れ」
...椅子に躓(つまず)いて転びましたが...
太宰治 「きりぎりす」
...わからぬままに座敷で寝転びながら書物を読んでいる時なぞでも...
橘外男 「逗子物語」
...そうするうちにも何度か転び...
豊島与志雄 「花子の陳述」
...何かにつまづきどしんと横倒れに転び...
永井荷風 「雪の日」
...庭を駈け出してまた転びました...
中里介山 「大菩薩峠」
...四人とも一度に杉の木立の崖の下へ転び落ち...
中里介山 「大菩薩峠」
...「周助は宗門御改めの台帳に載っている転び切支丹(改宗者)でしたよ」「フーム」「正直屑屋で通っているし...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...南町奉行直々の指図で、与力堀江又五郎が采配をふるい、三輪の万七が子分と下っ引を総動員して、転び切支丹と、その一家一族を根こそぎ洗い出し、たった三日の間に、江戸御府内だけで七十八人の切支丹関係者を探し出したのは、大したことでした...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...さすがに転びスキーがはずかしかった...
林芙美子 「生活」
...海にむかって転び落ちて行く永劫の瀑布...
久生十蘭 「南極記」
...危うく転びそうになる体を...
北條民雄 「いのちの初夜」
...幾度も転びそうになるのだ...
北條民雄 「いのちの初夜」
...みゝずばれのした腕をさすりながら暗い密房に寝転び新しい任務と...
槇村浩 「同志古味峯次郎」
...よろめいただけで転びはしなかったし...
山本周五郎 「樅ノ木は残った」
...ごろごろと転び落ちてしまった...
吉川英治 「新書太閤記」
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