...――ああその堂々たる相貌に...
芥川龍之介 「西郷隆盛」
...すなわち女優諸君が真に美貌に執するならば...
伊丹万作 「演技指導論草案」
...惡神(あくしん)の魔羅(まら)は隨分(ずゐぶん)思(おも)ひ切(き)つた不可思議(ふかしぎ)な相貌(さうぼう)の者(もの)ばかりである...
伊東忠太 「妖怪研究」
...変貌の手段として早くもこれを取り入れている...
江戸川乱歩 「探偵小説の「謎」」
...「――本当よ、あの義姉(ひと)の鼻をあかしてやりたいのさ、威張りかへつて胸くそが悪いつたらありやしない、お客と云ふお客はみんな自分の器量にひかされて来ると自惚(うぬぼ)れてるんだものねえ」さう云ふおきよはどうだらう、とおしげはをかしくなつた、――きのふ朝飯の時、他の女たちに聞えよがしにだが、しげちやん、誰さんと誰さんとは私のお客だからとらないでね、とヒステリみたいに叫んだ、彼女こそ今でもお客は自分を目当にしてゐると思ひたがつてゐるのではないかと、おしげは、お相憎(あいにく)さま、ふふんだと肚の中で呟いた、だが、考へやうによつては、おきよが苛々(いらいら)してゐるのももつともだと云ふ気がしないではなかつた、どうせ、飲み屋のことだから、そこで働く女の一人一人が俺が俺こそが客を持つてゐるとの自惚(うぬぼれ)がなくてはかなはないとだけではない、おきよにはおきよの古い思ひ出があつたはずだ、――おしげはまだ富士小学校に通つてゐる頃から、よくおきよの噂を聞いたものであつた、「たむら」のきよちやんと云ふ名が屡々(しばしば)男たちの唇に乗つた、一時は浅草での二三人ゐる評判娘のうちに数へられて、小さなおしげなぞも何とはなしに憧れの心持を抱いてゐた、公園へ遊びに来ては友だちと牒(しめ)しあはせて、その頃はまだ今のやうに店をひろげてゐなかつた「たむら」の前をうろうろして、彼女の姿をひとめでも垣間(かいま)見ようとしたこともある、あたいなんぞ、あとからついて行つた、あたいの顔を見て、笑つてたよなぞと云ふ友だちもあつたほどだ、美貌で、綺麗な着物を着、男たちに騒がれて、毎夜のんきに酒間のあつせんをしてゐる、おしげなぞの理想であつた、実際、以前はおきよをはりに客は来てゐた、評判娘と云ふ名前だけで通ふのもあつたらうし、毎夜うるさく歓心を得ようとしてゐるのもあつた、唯一度二度のお義理の酌に、すがるやうに下手な常談口をきいて、だらしなく悦んで笑つてるのもきつと見られた...
武田麟太郎 「一の酉」
...容貌は素晴らしく気高くて秀麗であったということが...
橘外男 「ウニデス潮流の彼方」
...これらの記事が春琴を視(み)ること神のごとくであったらしい検校から出たものとすればどれほど信を置いてよいか分らないけれども彼女の生れつきの容貌(ようぼう)が「端麗にして高雅」であったことはいろいろな事実から立証される...
谷崎潤一郎 「春琴抄」
...家来共や腰元共の居る席では自分の容貌に退(ひ)け目を感じて自然不機嫌になったけれども...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...*胸といみじき首筋と顏貌(おもて)を痛くかきむしり...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...整った容貌もゆがんでいた...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 三上於菟吉訳 「ライギット・パズル」
...一足とびにその全貌を見拔いたのである...
ドストエーフスキイ 神西清訳 「永遠の夫」
...容貌も尋常で、美しくもなく醜くもありませんでした...
豊島与志雄 「白藤」
...しかしてこれら人物の姿勢も容貌に等しく常に一定の典型に陥れるのみならず写生に遠ざかる事むしろ甚(はなはだ)しきものあり...
永井荷風 「江戸芸術論」
...)執拗(しつよう)醜悪な面貌を呈する...
中島敦 「斗南先生」
...冬の山は一瞬にしてその面貌をかえてしまう...
中谷宇吉郎 「樹氷の科学」
...松井須磨子のような美貌も持っていなければ...
林芙美子 「新版 放浪記」
...頬に深く皺を寄せて私の貌を眺めた...
北條民雄 「発病」
...その容貌(かんばせ)の白さはおののく白芙蓉(びゃくふよう)の花そのままだった...
吉川英治 「三国志」
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