...――昨夜(ゆうべ)、宵のしとしと雨が、初夜過ぎに一度どっと大降りになって、それが留(や)むと、陽気もぽっと、近頃での春らしかったが、夜半(よなか)に寂然(しん)と何の音もなくなると、うっすりと月が朧(おぼろ)に映すように、大路、小路、露地や、背戸や、竹垣、生垣、妻戸、折戸に、密(そっ)と、人目を忍んで寄添う風情に、都振(みやこぶり)なる雪女郎の姿が、寒くば絹綿を、と柳に囁(ささや)き、冷い梅の莟(つぼみ)はもとより、行倒れた片輪車、掃溜(はきだめ)の破筵(やれむしろ)までも、肌すく白い袖で抱いたのである...
泉鏡花 「薄紅梅」
...道を境に左は死刑人と行倒(ゆきだう)れの人を埋(うず)め...
魯迅 井上紅梅訳 「薬」
...相模(さがみ)の三増峠(みませとうげ)の頂上に於(おい)て行倒れの老人に出会(でっくわ)した...
江見水蔭 「怪異黒姫おろし」
...行倒れにならぬようにと...
アントン・チェーホフ Anton Chekhov 神西清訳 「頸の上のアンナ」
...何しろ行倒れのような姿でございましたから...
中里介山 「大菩薩峠」
...行倒れに倒れ死んでも...
中里介山 「大菩薩峠」
...ついに路傍に行倒れにのめって...
中里介山 「大菩薩峠」
...横行倒行している...
中里介山 「大菩薩峠」
...何十人何百人行倒れになるか...
野村胡堂 「黄金を浴びる女」
...行倒れの死骸はまだ取捨てる段取りにもならず...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...その行倒れを毒死と睨んだ平次親分の目には恐れ入つたよ...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...両国で行倒れになった時...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...その行倒れの死骸を見てくれないか...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...下谷(したや)の御門前(ごもんぜん)で行倒れになりかけているのを気の毒に思って連れ帰って下僕(しもべ)にした...
久生十蘭 「平賀源内捕物帳」
...芝邊の寺町に行倒れの非人がありました...
三田村鳶魚 「物貰ひの話」
...これは前にあつた芝の寺門の行倒れの詩とよく似て居ります...
三田村鳶魚 「物貰ひの話」
...行倒れで収容された者などもいた...
山本周五郎 「赤ひげ診療譚」
...このまま行倒おれにならっしゃるところだったによ」「忠平の死骸が...
夢野久作 「眼を開く」
便利!手書き漢字入力検索