...もう黄昏(たそがれ)の人影が蝙蝠のようにちらほらする回向院前の往来を...
芥川龍之介 「妖婆」
...彼の誠意を嗤(わら)うシイカの蝙蝠(こうもり)のような笑声を聞いた...
池谷信三郎 「橋」
...蝙蝠(こうもり)のような翅(はね)の生えた本物の吸血鬼がこの黄昏の中に現われて...
海野十三 「恐怖の口笛」
...化け蝙蝠(こうもり)のように暗黒の空間を跳ねまわる...
海野十三 「千早館の迷路」
...その手は夕暮をとぶ蝙蝠のやうだ...
大手拓次 「藍色の蟇」
...一人の洋画家が古ぼけた繻子張(しゆすばり)の蝙蝠傘(かうもりがさ)の下で...
薄田泣菫 「茶話」
...格子の外の宵闇に蝙蝠(こうもり)の飛ぶ町のありさまを...
谷崎潤一郎 「蓼喰う虫」
...だが蝙蝠は、ひらりと身をかわしました...
豊島与志雄 「古木」
...蝙蝠傘(かうもりがさ)と小包(こづゝみ)を提(さ)げた貧し気(げ)な女房が日和下駄(ひよりげた)で色気もなく砂を蹴立(けた)てゝ大股(おほまた)に歩いて行つた...
永井荷風 「すみだ川」
...そのなかに、お角の眼をひいたのは、図抜けて大きな人が、西洋の蝙蝠傘(こうもりがさ)をさして上って来たことで、蝙蝠傘の流行は、今ではさして珍しいことではないが、まあ、どちらかといえば非常なハイカラな、新し好みの人に多かったのを、これは実にバンカラな人が、その流行ものの傘をさして、のこのこと出て来たから、それで一層お角の目を惹(ひ)いたのでしょう...
中里介山 「大菩薩峠」
...何ですか?」と蝙蝠傘の主(ぬし)は...
中里介山 「大菩薩峠」
...ハハハハ」剥(は)げかかった山高帽を阿弥陀(あみだ)に被(かぶ)って毛繻子張(けじゅすば)りの蝙蝠傘(こうもり)をさした...
夏目漱石 「野分」
...一と月も前から成瀬屋の一家を鏖殺(みなごろ)しにするという蝙蝠冠兵衛の手紙が三本も来ているじゃありませんか」「よくある術(て)だ」「ところが...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...蝙蝠傘(こうもりがさ)と烏(からす)と云う詩をつくってみる...
林芙美子 「新版 放浪記」
...あの少年を蝙蝠にしてしまつたのだと...
三好達治 「測量船拾遺」
...みやげに蝙蝠の日傘を買って来た...
森鴎外 「雁」
...兼常氏は日本音楽を西洋音楽に勝るとするのは蝙蝠(こうもり)を見て飛行機より偉大であるとするに等しいといわれました...
与謝野晶子 「激動の中を行く」
...白い蝙蝠(こうもり)みたいな白粉(おしろい)の女たちが出て...
吉川英治 「牢獄の花嫁」
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