...食蜃人(しょくしんじん)と云うのは...
芥川龍之介 「犬と笛」
...生駒山(いこまやま)の洞穴(ほらあな)に住んでいる食蜃人の所へ飛んで行け...
芥川龍之介 「犬と笛」
...さう云ふ蜃気楼(しんきろう)は壊れてしまふ...
芥川龍之介 「好色」
...朧げなりとも浮び上る私の蜃気楼のある事を...
芥川龍之介 「後世」
...「どうもこの頃は蜃気楼ばやりだな...
芥川龍之介 「蜃気楼」
...河鹿(かじか)が吐(は)く蜃氣樓(しんきろう)であるらしい...
泉鏡太郎 「雨ふり」
...山谷(さんこく)の蜃氣樓(しんきろう)と言(い)つた風情(ふぜい)がある...
泉鏡太郎 「飯坂ゆき」
...蜃気楼と判断せざるを得ない...
井上円了 「おばけの正体」
...あれも遂に蜃気楼中の幻影の人物だったろうか...
海野十三 「深夜の市長」
...私は態々(わざわざ)魚津へ蜃気楼(しんきろう)を見に出掛けた帰り途(みち)であった...
江戸川乱歩 「押絵と旅する男」
...漫りに蜃氣樓をかまへ...
大町桂月 「宗吾靈堂」
...蜃気楼(かいやぐち)もあまり立たないと思うておりゃ...
田中貢太郎 「放生津物語」
...そうして、両眼の明らかな、心術の正直な同行の人が、現物を指して、島があるというのだから、弁信が考え込まざるを得なくなったので、「米友さん、違やしませんか、もしやそれは、水の上や海岸に起りがちな蜃気楼(しんきろう)というものではありませんか――そちらの方に竹生島があるとは、どうしても考えられません」それをも米友は、頑(がん)として受けつけないで言いました、「蜃気楼なら、おいらも伊勢の海にいて知っているよ、あんな竜宮城とは違うんだ、そら、あの通り岩で出来て、木の生えた島が浮いている」「では、やっぱり、竹生島でございましょうかしら、いつのまにか舟が北をめぐって、そうして竹生島の裏へ出たのかもしれません、そういうはずはありません、断じてありませんが、事実が証明する上は仕方ございません、わたくしの勘のあやまちでございましたか、或いは出舟の際の水先のあやまりでございましたか……」「とにかくあの島へ舟を着けてみるぜ、いいかい、弁信さん」百三十六しかしながら、これは米友の眼の誤りでないことは勿論(もちろん)、弁信の勘の間違いでもなかったのです...
中里介山 「大菩薩峠」
...海上に浮んだ蜃氣樓のやうな氣がしたからだ...
萩原朔太郎 「散文詩・詩的散文」
...神戸の街が蜃気楼のように霞み出すと...
牧逸馬 「上海された男」
...あの蜃気楼(しんきろう)といふものとよく似てゐるの...
宮原晃一郎 「子良の昇天」
...又今切角お久美さんの心の前に美くしく現われて居る蜃気楼を自分の一言で打ち崩す事も出来なかった...
宮本百合子 「お久美さんと其の周囲」
...しかし、其処は、右も左も満々たる大海原の真只中で、針でついたほどの島影も見えない――「まだ、ですね」「いや、そこだよ」「でも見渡すかぎりの海で……」「島は隠してあるのさ、俗物の近寄らんように」「島を隠してある?」「そうだよ、つまり蜃気楼、人工蜃気楼で一面の海のように見せかけてあるんだ」「ほう……」「これなんか一寸面白いと思うね...
蘭郁二郎 「地図にない島」
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