例文・使い方一覧でみる「蛉」の意味


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...長い竹竿を持って蜻(とんぼ)を追い廻している...   長い竹竿を持って蜻蛉を追い廻しているの読み方
エドワード・シルヴェスター・モース Edward Sylvester Morse 石川欣一訳 「日本その日その日」

...千日草浦島草のまわりで蝶(ちょう)や蜻(とんぼ)を追いまわしているようすだ...   千日草浦島草のまわりで蝶や蜻蛉を追いまわしているようすだの読み方
伊藤左千夫 「紅黄録」

...草蜻がたべる...   草蜻蛉がたべるの読み方
アンリイ・ファブル Jean-Henri Fabre 大杉栄、伊藤野枝訳 「科学の不思議」

...蜻の発生がたいへん遅れている上にいつも真西より三十度ほど北にふれた方角にばかり向いて飛んでいること...   蜻蛉の発生がたいへん遅れている上にいつも真西より三十度ほど北にふれた方角にばかり向いて飛んでいることの読み方
海野十三 「地球盗難」

......   の読み方
種田山頭火 「行乞記」

......   の読み方
鶴彬 「鶴彬全川柳」

...障子(しょうじ)のガラス越しに見える秋晴れの空を蜻(とんぼ)の群れが引っ切りなしにだいたい南から北の方向に飛んで行く...   障子のガラス越しに見える秋晴れの空を蜻蛉の群れが引っ切りなしにだいたい南から北の方向に飛んで行くの読み方
寺田寅彦 「柿の種」

...使い残りの紅皿を姉にねだって口のはたを染めながら皿のふちに青く光る紅を溶(とか)して虻(あぶ)や蜻(とんぼ)の絵をかいた...   使い残りの紅皿を姉にねだって口のはたを染めながら皿のふちに青く光る紅を溶して虻や蜻蛉の絵をかいたの読み方
中勘助 「小品四つ」

...茅花さく川のつゝみに繩繋ぐ牛飼人に聞きて來にけりいにしへもいまも同じく安房人の誇りにすべき伴家主(あたへぬし)これ伴家主おやを懷ひし眞心は世の人おもふ盡くる時なくうらなごむ入江の磯を打ち出でゝおやにまつると鯛も釣りけむ父母のよはひも過ぎて白髪の肩につくまで戀ひにけらしも麥つくる安房のかや野の松蔭に鼠麹草(はゝこ)の花はなつかしみ見つ三日、汐見途上濱苦菜ひたさく磯を過ぎ來ればかち布刈り積み藁きせて置く四日、那古の濱より汽船に乘る、知り人の子等四人甲斐甲斐しく渚まで見送りす、一人は人に負はれ、一人はまだ學齢に滿たざれど歩みて來る、此の子畫を描くを好みて常に左の手のみを用ふ、心うれしきまゝに後に母なる人のもとへよみておくりし歌のうち二首青梅と雀と描きし左手に書持つらむか復た逢ふ時は負はれ來し那古(なご)の砂濱ひとり來て濱鼓子花(はまひるがほ)を摘まむ日や何時炭燒くひま春の末より夏のはじめにかけて炭竈のほとりに在りてよめる歌十三首のうち積みあげし眞木に着せたる萱菰に撓みてとゞく椶櫚の樹の花炭がまを焚きつけ居れば赤き芽の柘榴のうれに没日さし來も芋植うと人の出で去れば獨り居て炭燒く我に松雀(まつめ)しき鳴く炭竈の灰篩(ふる)ひ居れば竹やぶに花ほの白しなるこ百合ならむ槲木(かしはぎ)のふさに垂りさく花散りて世の炭がまは燒かぬ此頃炭がまを夜見にゆけば垣の外に迫るがごとく蛙きこえ來炭がまを這ひ出てひとり水のめば手桶の水に樫の花浮けり廐戸にかた枝さし掩ふ枇杷の木の實のつばらかに目につく日頃少弟整四郎四月二十九日を以て征途に上る曰く、自ら訓練せる小隊を率ゐるなりと、予妹二人を伴ひて下野小山の驛に會す、彼等三人相逢はざること既に數年、言なくして唯怡然たり、短歌五首を作りて之を送る大君の御楯仕ふる丈夫は限り知らねど汝をおもふ我は我が庭の植木のかへで若楓歸りかへらず待ちつゝ居らむ淺緑染めし樹群にあさ日さしうらぐはしもよ我がますら男は竹棚に花さく梨の潔くいひてしことは母に申さむおぼろかに務めおもふな麥の穗の秀でも秀でずも問ふ所に非ず雜詠八首のうち篠の葉のしげれるなべに樒さき淋しき庭のうぐひすの聲新墾の小松がなかに作りたる三うね四うねの豌豆の花青葱の花さく畑の桃一樹しげりもあへず毛虫皆喰ひ桑の木の茂れるなかにさきいでゝ仄かに見ゆる豌豆の花行々子の歌六月なかば左千夫氏の來状近く山百合氏の來るをいふ、且つ添へていふ、庭前の槐に行々子頻りに鳴くと、兩友閑談の状目に賭るの思あり、乃ち懷をのべて左千夫氏に寄す垣の外ははちす田近み慕ひ來て槐の枝に鳴くかよしきりあしむらに棲める葭剖いかさまに槐の枝に止まりて鳴くらむ竪川の君棲む庭は狹けれど葭剖鳴かば足らずしもあらじ五月雨のけならべ降るに庭の木によしきり鳴かば人待つらむか栗の木の花さく山の雨雲を分けくる人に鳴くかよしきりみすゞ刈る科野の諏訪は湖に葭剖鳴かむ庭には鳴かじ稀人を心に我は思へども行きても逢はず葭剖も聞かず我が庭の杉苔がうへを立ち掃くとそこなる庭の槐をぞおもふ諏訪の短歌會第一會九月五日、地藏寺に集る、同人總べて五、後庭密樹の間には清水灑々として石上に落ち、立つて扉を押せば諏訪の湖近く横りて明鏡の如し、此清光を恣にして敢て人員の乏しきを憂へず、題は秋の田、蜻、殘暑、朝草刈秋の田のかくめる湖の眞上には鱗なす雲ながく棚引く武藏野の秋田は濶し椋鳥の筑波嶺さして空に消につゝ(道灌山遠望)豆(さゝげ)干す庭の筵に森の木のかげる夕に飛ぶ赤蜻水泡よる汀に赤き蓼の穗に去りて又來るおはぐろ蜻秋の日は水引草の穗に立ちて既に長けど暑き此頃科野路は蕎麥さく山を辿りきて諏訪の湖邊に暑し此日は秣刈り霧深山をかへり來て垣根にうれし月見草の花同第二會七日、布半の樓上に開く、會するもの更に一人を減ず、題は秋の山、霧、灯、秋の菓物杉深き溪を出で行けば草山の羊齒の黄葉に晴れ渡る空鹽谷のや馬飼ふ山の草山ゆ那須野の霧に日のあたる見ゆ(下野鹽原の奥)山梨の市の瀬村は灯ともさず榾火がもとに夜の業すも(多摩川水源地)瓜畑に夜を守るともし風さやり桐の葉とりて包むともし灯黄葉して日に/\散ればなり垂れし庭の梨の木枝の淋しも二荒山いまだ明けねば關本の圃なる梨は露ながらとる羇旅雜咏八月十八日、鬼怒川を下りて利根川に出づ、濁流滔々たり、舟運河に入る、利根川や漲る水に打ち浸る楊吹きしなふ秋の風かもおぼほしく水泡吹きよする秋風に岸の眞菰に浪越えむとす同廿三日、雨、房州に航す相模嶺は此日はみえず安房の門や鋸山に雲飛びわたる秋雨のしげくし降れば安房の海たゆたふ浪にしぶき散るかも廿七日、房州那古の濱より鷹の島に遊ぶ鮑とる鷹の島曲をゆきしかば手折りて來たる濱木綿の花潮滿つと波打つ磯の蕁麻(いらくさ)の茂きがなかにさける濱木綿はまゆふは花のおもしろ夕されば折りもて來れど開く其花卅一日、甲斐の國に入る、幾十個の隧道を出入して鹽山附近の高原を行くに心境頓に豁然たるを覺ゆ甲斐の國は青田の吉國(よくに)桑の國唐黍(もろこしきび)の穗につゞく國古屋氏のもとにやどる矚目二首梅の木の落葉の庭ゆ垣越しに巨摩(こま)の群嶺に雲騷ぐ見ゆこゝにして柿の梢にたゝなはる群山こめて秋の雲立つ九月一日、古屋志村兩氏と田圃の間を行く、低き山の近く見ゆるに頂まで皆畑なるは珍らし甲斐人の石臼たてゝ粉に碎く唐黍か此見ゆる山は三日、御嶽より松島村に下る途上稗の穗に淋しき谷をすぎくればおり居る雲の峰離れゆく霧のごと雨ふりくればほのかなる谷の茂りに白き花何鵯の朝鳴く山の栗の木の梢静に雲のさわたる韮崎走り穗の白き秋田をゆきすぎて釜なし川は見るに遙かなり甲斐に入りてより四日、雲つねに山の巓を去らず韮崎や釜なし川の遙々にいづこぞ不盡の雲深み見えず祖母石(うばや)より對岸を望むいたくたつは何焚く煙ぞ釜なしの楊がうへに遠く棚曳く臺が原に入る白妙にかはらはゝこのさきつゞく釜無川に日は暮れむとす四日、臺が原驛外小雀(こがらめ)の榎の木に騷ぐ朝まだき木綿波雲に見ゆる山の秀(ほ)信州に入る釜なしの蔦木の橋をさわたれば蓬がおどろ雨こぼれきぬ富士見村をすゝきの(しもと)に交り穗になびく山ふところの秋蕎麥の花坂室の坂上よりはじめて湖水を見る秋の田のゆたかにめぐる諏訪のうみ霧ほがらかに山に晴れゆく六日、諏訪の霧が峰に登る、途上たていしの山こえゆけば落葉松(からまつ)の木深き溪に鵙の啼く聲立石の淺山坂ゆかへりみる薄に飛彈の山あらはれぬ霧が峰うれしくも分けこしものか遙々に松虫草のさきつゞく山つぶれ石あまたもまろぶたをり路の疎らの薄秋の風ふく霧が峰は草の茂山たひら山萩刈る人の大薙に刈る八日、鹽尻峠を越えて桔梗が原を過ぐしだり穗の粟の畑に墾りのこる桔梗が原の女郎花の花をみなへし茂きがもとに疎らかに小松稚松おひ交り見ゆ九日、奈良井を發す曉のほのかに霧のうすれゆく落葉松山にかし鳥の鳴く鳥居峠諸樹木(もろきぎ)をひた掩ひのぼる白雲の絶間にみゆる谷の秋蕎麥宮の越附近木曾人の秋田のくろに刈る芒かり干すうへに小雨ふりきぬ西野川の木曾川に合するほとり道漸くたかし、崖下の杉の梢は道路の上に聳えたり鋒杉の茂枝がひまゆ落合の瀬に噛む水の碎くるを見つ須原の地に入る、河聲やゝ遠し男郎花まじれる草の秋雨にあまたは鳴かぬこほろぎの聲終日雨やまず木曾山はおくがは深み思はねど見ゆべき峰も隱りけるかも十日、夙に須原を發す木曾人の朝草刈らす桑畑にまだ鳴きしきるこほろぎの聲長野々尻間河にのぞみて大樹おほし木曾人よあが田の稻を刈らむ日やとりて焚くらむ栗の強飯(こはいひ)妻籠(つまご)より舊道を辿る、溪水に襯衣を濯ぎて日頃の垢を流す、又巨巖の蓬を求めて蓙しきて打ち臥す、一つは秋天の高きを仰ぎ、一つは衣の乾く程を待つなりゆるやかにすぎゆく雲を見おくれば山の木群のさや/\に搖る冷けき流れの水に足うら浸で石を枕ぐ旅人われは馬籠(まごめ)峠を美濃に下るまさやかにみゆる長山美濃の山青き山遠し峰かさなりて十一日、釜戸より日吉といふ所へ越す峠に例の蓙をしきて打ち臥すに小き聲にて忙しく鳴く虫あり、日ごろも聞く所なり、蝉の小さなるものなりと或人いふ、ちつち蝉といふものにや、草のなかにあれば假に草蝉とよびて汗あえて越ゆるたむけの草村に草蝉鳴きて涼し木蔭は日吉より次月(しつき)というところへ越すなみなへし短くさける赤土の稚松山は汗もしとゞに十二日、中山道伏見驛より川を下らむとして成らず、獨り國道を辿る木曾川のすぎにし舟を追ひがてに松の落葉を踏みつゝぞ來し木曾川の沿岸をゆく鱗なす秋の白雲棚引きて犬山の城松の上に見ゆ各務が原淺茅生の各務(かゞみ)が原は群れて刈る秣千草眞熊手に掻く十五日、江崎なる華園氏のもとを辭して大垣に至る松蔭は篠も芒も異草も皆悉くまむじゆさげ赤し鯰江の繩手をくれば田のくろの菽のなかにも曼珠沙華赤し十六日、潮音氏に導かれて大垣より養老山に遊ぶ、途に遙に小爆布をのぞむ多度山の櫟がしたに刈る草の秣が瀧はよらで過ぎゆく養老公園落葉せるさくらがもとの青芝に一むら淋し白萩の花養老の瀧白栲の瀧浴衣掛けて干す樹々の櫻は紅葉散るかも瀧の邊の槭(もみぢ)の青葉ぬれ青葉しぶきをいたみ散りにけるかも十七日、潮音、蓼圃の兩氏と揖斐川の上流に鮎簗を見る揖斐川は鮎の名どころ揖斐人の大簗かけて秋の瀬に待つ揖斐川の簗落つる水はたぎつ瀬ととゞろに碎け川の瀬に落つ十九日、大垣を立つ、雨近江路の秋田はろかに見はるかす彦根が城に雲の脚垂れぬ石山寺附近蜆とる舟おもしろき勢多川のしづけき水に秋雨ぞふる粟津秋雨に粟津野くれば葦の穗に湖靜かなり遠山は見えず逢阪を越えて山科村に至り、天智天皇の山陵を拜す秋雨の薄雲低く迫り來る木群がなかや中の大兄すめら二十日、雨、法然院ひやゝけく庭にもりたる白沙の松の落葉に秋雨ぞ降る竹村は草も茗荷も黄葉してあかるき雨に鵯ぞ鳴くなる白河村女郎花つかねて浸てし白河の水さびしらに降る秋の雨一乘寺村秋雨のしく/\そゝぐ竹垣にほうけて白きたらの木の花詩仙堂落葉せるさくらがもとにい添ひたつ木槿の花の白き秋雨唐鶸(からひは)の雨をさびしみ鳴く庭に十もとに足らぬ黍垂れにけり下鴨に詣づ、みたらしの上には樟の大樹さし掩ひて秋雨のしづくひまもなし糺の森かみのみたらし秋澄みて檜皮(ひはだ)はひてぬ神のみたらし二十一日、伏見桃山柿の木の林がもとはおしなべて立枝の獨活の花さきにけりみちのへに草も莠(はぐさ)も打ち茂る圃の桔梗は枯れながらさく愚庵和尚の遺蹟を訪ふ、庵室の縁の高きは遠望に佳ならむがためなり、戸は鎖したれど時久しからねば垣も未だあらたなり...   茅花さく川のつゝみに繩繋ぐ牛飼人に聞きて來にけりいにしへもいまも同じく安房人の誇りにすべき伴家主これ伴家主おやを懷ひし眞心は世の人おもふ盡くる時なくうらなごむ入江の磯を打ち出でゝおやにまつると鯛も釣りけむ父母のよはひも過ぎて白髪の肩につくまで戀ひにけらしも麥つくる安房のかや野の松蔭に鼠麹草の花はなつかしみ見つ三日、汐見途上濱苦菜ひたさく磯を過ぎ來ればかち布刈り積み藁きせて置く四日、那古の濱より汽船に乘る、知り人の子等四人甲斐甲斐しく渚まで見送りす、一人は人に負はれ、一人はまだ學齢に滿たざれど歩みて來る、此の子畫を描くを好みて常に左の手のみを用ふ、心うれしきまゝに後に母なる人のもとへよみておくりし歌のうち二首青梅と雀と描きし左手に書持つらむか復た逢ふ時は負はれ來し那古の砂濱ひとり來て濱鼓子花を摘まむ日や何時炭燒くひま春の末より夏のはじめにかけて炭竈のほとりに在りてよめる歌十三首のうち積みあげし眞木に着せたる萱菰に撓みてとゞく椶櫚の樹の花炭がまを焚きつけ居れば赤き芽の柘榴のうれに没日さし來も芋植うと人の出で去れば獨り居て炭燒く我に松雀しき鳴く炭竈の灰篩ひ居れば竹やぶに花ほの白しなるこ百合ならむ槲木のふさに垂りさく花散りて世の炭がまは燒かぬ此頃炭がまを夜見にゆけば垣の外に迫るがごとく蛙きこえ來炭がまを這ひ出てひとり水のめば手桶の水に樫の花浮けり廐戸にかた枝さし掩ふ枇杷の木の實のつばらかに目につく日頃少弟整四郎四月二十九日を以て征途に上る曰く、自ら訓練せる小隊を率ゐるなりと、予妹二人を伴ひて下野小山の驛に會す、彼等三人相逢はざること既に數年、言なくして唯怡然たり、短歌五首を作りて之を送る大君の御楯仕ふる丈夫は限り知らねど汝をおもふ我は我が庭の植木のかへで若楓歸りかへらず待ちつゝ居らむ淺緑染めし樹群にあさ日さしうらぐはしもよ我がますら男は竹棚に花さく梨の潔くいひてしことは母に申さむおぼろかに務めおもふな麥の穗の秀でも秀でずも問ふ所に非ず雜詠八首のうち篠の葉のしげれるなべに樒さき淋しき庭のうぐひすの聲新墾の小松がなかに作りたる三うね四うねの豌豆の花青葱の花さく畑の桃一樹しげりもあへず毛虫皆喰ひ桑の木の茂れるなかにさきいでゝ仄かに見ゆる豌豆の花行々子の歌六月なかば左千夫氏の來状近く山百合氏の來るをいふ、且つ添へていふ、庭前の槐に行々子頻りに鳴くと、兩友閑談の状目に賭るの思あり、乃ち懷をのべて左千夫氏に寄す垣の外ははちす田近み慕ひ來て槐の枝に鳴くかよしきりあしむらに棲める葭剖いかさまに槐の枝に止まりて鳴くらむ竪川の君棲む庭は狹けれど葭剖鳴かば足らずしもあらじ五月雨のけならべ降るに庭の木によしきり鳴かば人待つらむか栗の木の花さく山の雨雲を分けくる人に鳴くかよしきりみすゞ刈る科野の諏訪は湖に葭剖鳴かむ庭には鳴かじ稀人を心に我は思へども行きても逢はず葭剖も聞かず我が庭の杉苔がうへを立ち掃くとそこなる庭の槐をぞおもふ諏訪の短歌會第一會九月五日、地藏寺に集る、同人總べて五、後庭密樹の間には清水灑々として石上に落ち、立つて扉を押せば諏訪の湖近く横りて明鏡の如し、此清光を恣にして敢て人員の乏しきを憂へず、題は秋の田、蜻蛉、殘暑、朝草刈秋の田のかくめる湖の眞上には鱗なす雲ながく棚引く武藏野の秋田は濶し椋鳥の筑波嶺さして空に消につゝ豆干す庭の筵に森の木のかげる夕に飛ぶ赤蜻蛉水泡よる汀に赤き蓼の穗に去りて又來るおはぐろ蜻蛉秋の日は水引草の穗に立ちて既に長けど暑き此頃科野路は蕎麥さく山を辿りきて諏訪の湖邊に暑し此日は秣刈り霧深山をかへり來て垣根にうれし月見草の花同第二會七日、布半の樓上に開く、會するもの更に一人を減ず、題は秋の山、霧、灯、秋の菓物杉深き溪を出で行けば草山の羊齒の黄葉に晴れ渡る空鹽谷のや馬飼ふ山の草山ゆ那須野の霧に日のあたる見ゆ山梨の市の瀬村は灯ともさず榾火がもとに夜の業すも瓜畑に夜を守るともし風さやり桐の葉とりて包むともし灯黄葉して日に/\散ればなり垂れし庭の梨の木枝の淋しも二荒山いまだ明けねば關本の圃なる梨は露ながらとる羇旅雜咏八月十八日、鬼怒川を下りて利根川に出づ、濁流滔々たり、舟運河に入る、利根川や漲る水に打ち浸る楊吹きしなふ秋の風かもおぼほしく水泡吹きよする秋風に岸の眞菰に浪越えむとす同廿三日、雨、房州に航す相模嶺は此日はみえず安房の門や鋸山に雲飛びわたる秋雨のしげくし降れば安房の海たゆたふ浪にしぶき散るかも廿七日、房州那古の濱より鷹の島に遊ぶ鮑とる鷹の島曲をゆきしかば手折りて來たる濱木綿の花潮滿つと波打つ磯の蕁麻の茂きがなかにさける濱木綿はまゆふは花のおもしろ夕されば折りもて來れど開く其花卅一日、甲斐の國に入る、幾十個の隧道を出入して鹽山附近の高原を行くに心境頓に豁然たるを覺ゆ甲斐の國は青田の吉國桑の國唐黍の穗につゞく國古屋氏のもとにやどる矚目二首梅の木の落葉の庭ゆ垣越しに巨摩の群嶺に雲騷ぐ見ゆこゝにして柿の梢にたゝなはる群山こめて秋の雲立つ九月一日、古屋志村兩氏と田圃の間を行く、低き山の近く見ゆるに頂まで皆畑なるは珍らし甲斐人の石臼たてゝ粉に碎く唐黍か此見ゆる山は三日、御嶽より松島村に下る途上稗の穗に淋しき谷をすぎくればおり居る雲の峰離れゆく霧のごと雨ふりくればほのかなる谷の茂りに白き花何鵯の朝鳴く山の栗の木の梢静に雲のさわたる韮崎走り穗の白き秋田をゆきすぎて釜なし川は見るに遙かなり甲斐に入りてより四日、雲つねに山の巓を去らず韮崎や釜なし川の遙々にいづこぞ不盡の雲深み見えず祖母石より對岸を望むいたくたつは何焚く煙ぞ釜なしの楊がうへに遠く棚曳く臺が原に入る白妙にかはらはゝこのさきつゞく釜無川に日は暮れむとす四日、臺が原驛外小雀の榎の木に騷ぐ朝まだき木綿波雲に見ゆる山の秀信州に入る釜なしの蔦木の橋をさわたれば蓬がおどろ雨こぼれきぬ富士見村をすゝきのに交り穗になびく山ふところの秋蕎麥の花坂室の坂上よりはじめて湖水を見る秋の田のゆたかにめぐる諏訪のうみ霧ほがらかに山に晴れゆく六日、諏訪の霧が峰に登る、途上たていしの山こえゆけば落葉松の木深き溪に鵙の啼く聲立石の淺山坂ゆかへりみる薄に飛彈の山あらはれぬ霧が峰うれしくも分けこしものか遙々に松虫草のさきつゞく山つぶれ石あまたもまろぶたをり路の疎らの薄秋の風ふく霧が峰は草の茂山たひら山萩刈る人の大薙に刈る八日、鹽尻峠を越えて桔梗が原を過ぐしだり穗の粟の畑に墾りのこる桔梗が原の女郎花の花をみなへし茂きがもとに疎らかに小松稚松おひ交り見ゆ九日、奈良井を發す曉のほのかに霧のうすれゆく落葉松山にかし鳥の鳴く鳥居峠諸樹木をひた掩ひのぼる白雲の絶間にみゆる谷の秋蕎麥宮の越附近木曾人の秋田のくろに刈る芒かり干すうへに小雨ふりきぬ西野川の木曾川に合するほとり道漸くたかし、崖下の杉の梢は道路の上に聳えたり鋒杉の茂枝がひまゆ落合の瀬に噛む水の碎くるを見つ須原の地に入る、河聲やゝ遠し男郎花まじれる草の秋雨にあまたは鳴かぬこほろぎの聲終日雨やまず木曾山はおくがは深み思はねど見ゆべき峰も隱りけるかも十日、夙に須原を發す木曾人の朝草刈らす桑畑にまだ鳴きしきるこほろぎの聲長野々尻間河にのぞみて大樹おほし木曾人よあが田の稻を刈らむ日やとりて焚くらむ栗の強飯妻籠より舊道を辿る、溪水に襯衣を濯ぎて日頃の垢を流す、又巨巖の蓬を求めて蓙しきて打ち臥す、一つは秋天の高きを仰ぎ、一つは衣の乾く程を待つなりゆるやかにすぎゆく雲を見おくれば山の木群のさや/\に搖る冷けき流れの水に足うら浸で石を枕ぐ旅人われは馬籠峠を美濃に下るまさやかにみゆる長山美濃の山青き山遠し峰かさなりて十一日、釜戸より日吉といふ所へ越す峠に例の蓙をしきて打ち臥すに小き聲にて忙しく鳴く虫あり、日ごろも聞く所なり、蝉の小さなるものなりと或人いふ、ちつち蝉といふものにや、草のなかにあれば假に草蝉とよびて汗あえて越ゆるたむけの草村に草蝉鳴きて涼し木蔭は日吉より次月というところへ越すなみなへし短くさける赤土の稚松山は汗もしとゞに十二日、中山道伏見驛より川を下らむとして成らず、獨り國道を辿る木曾川のすぎにし舟を追ひがてに松の落葉を踏みつゝぞ來し木曾川の沿岸をゆく鱗なす秋の白雲棚引きて犬山の城松の上に見ゆ各務が原淺茅生の各務が原は群れて刈る秣千草眞熊手に掻く十五日、江崎なる華園氏のもとを辭して大垣に至る松蔭は篠も芒も異草も皆悉くまむじゆさげ赤し鯰江の繩手をくれば田のくろの菽のなかにも曼珠沙華赤し十六日、潮音氏に導かれて大垣より養老山に遊ぶ、途に遙に小爆布をのぞむ多度山の櫟がしたに刈る草の秣が瀧はよらで過ぎゆく養老公園落葉せるさくらがもとの青芝に一むら淋し白萩の花養老の瀧白栲の瀧浴衣掛けて干す樹々の櫻は紅葉散るかも瀧の邊の槭の青葉ぬれ青葉しぶきをいたみ散りにけるかも十七日、潮音、蓼圃の兩氏と揖斐川の上流に鮎簗を見る揖斐川は鮎の名どころ揖斐人の大簗かけて秋の瀬に待つ揖斐川の簗落つる水はたぎつ瀬ととゞろに碎け川の瀬に落つ十九日、大垣を立つ、雨近江路の秋田はろかに見はるかす彦根が城に雲の脚垂れぬ石山寺附近蜆とる舟おもしろき勢多川のしづけき水に秋雨ぞふる粟津秋雨に粟津野くれば葦の穗に湖靜かなり遠山は見えず逢阪を越えて山科村に至り、天智天皇の山陵を拜す秋雨の薄雲低く迫り來る木群がなかや中の大兄すめら二十日、雨、法然院ひやゝけく庭にもりたる白沙の松の落葉に秋雨ぞ降る竹村は草も茗荷も黄葉してあかるき雨に鵯ぞ鳴くなる白河村女郎花つかねて浸てし白河の水さびしらに降る秋の雨一乘寺村秋雨のしく/\そゝぐ竹垣にほうけて白きたらの木の花詩仙堂落葉せるさくらがもとにい添ひたつ木槿の花の白き秋雨唐鶸の雨をさびしみ鳴く庭に十もとに足らぬ黍垂れにけり下鴨に詣づ、みたらしの上には樟の大樹さし掩ひて秋雨のしづくひまもなし糺の森かみのみたらし秋澄みて檜皮はひてぬ神のみたらし二十一日、伏見桃山柿の木の林がもとはおしなべて立枝の獨活の花さきにけりみちのへに草も莠も打ち茂る圃の桔梗は枯れながらさく愚庵和尚の遺蹟を訪ふ、庵室の縁の高きは遠望に佳ならむがためなり、戸は鎖したれど時久しからねば垣も未だあらたなりの読み方
長塚節 「長塚節歌集 中」

......   の読み方
野口雨情 「のきばすずめ」

...赤蜻(あかとんぼ)の行方(ゆくえ)を眺めておりました...   赤蜻蛉の行方を眺めておりましたの読み方
野村胡堂 「銭形平次捕物控」

...特に虫や鳥やの小動物を愛し、蛇(へび)、蛙、蝉(せみ)、蜘蛛(くも)、蜻(とんぼ)、蝶(ちょう)などが好きであった...   特に虫や鳥やの小動物を愛し、蛇、蛙、蝉、蜘蛛、蜻蛉、蝶などが好きであったの読み方
萩原朔太郎 「小泉八雲の家庭生活」

...私がやつとあまたの王朝時代の日記の中からこれこそと思つて選んできた「蜻日記(かげろふのにき)」といふ...   私がやつとあまたの王朝時代の日記の中からこれこそと思つて選んできた「蜻蛉日記」といふの読み方
堀辰雄 「七つの手紙」

...花の形が蜻(とんぼ)に似ているからだとの説もあるが(『高志路(こしじ)一巻一〇号』)...   花の形が蜻蛉に似ているからだとの説もあるが一巻一〇号』)の読み方
柳田國男 「野草雑記・野鳥雑記」

...……するとそこの草原で蜻(とんぼ)を追いまわしていた子供たちのなかから...   ……するとそこの草原で蜻蛉を追いまわしていた子供たちのなかからの読み方
山本周五郎 「新潮記」

......   の読み方
夢野久作 「猟奇歌」

...赤蜻(あかとんぼ)みてえに...   赤蜻蛉みてえにの読み方
吉川英治 「新・水滸伝」

...眼のくらんだ蜻(やんま)のように...   眼のくらんだ蜻蛉のようにの読み方
吉川英治 「宮本武蔵」

「蛉」の読みかた

「蛉」の書き方・書き順

いろんなフォントで「蛉」

「蛉」の英語の意味

「なんとか蛉」の一覧  


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