...秋の日のいと温かに虻(あぶ)の声おとづれ来なる南窓(ミナミマド)...
石川啄木 「詩」
...熊も居ず、猿も居ず、鹿も居ず、僅に兎と雉と蝮と蛙と馬追とこほろぎと岩蟲と女の兒の頭と襟とに住む虱と、道路の捨石の下にまで住む蚤と、何處の家の食膳にも止まる蠅と、虻と、笹でうまつてゐる海岸の切岸に住む雀と、山の岩で數町さきの異性と鳴き交はす鳶と、濱に來て犬をからかふ烏と、魚賣の手に寄生する水蟲と、人の數に匹敵する猫とその猫の取りきることの出來ない鼠と、まづその位の動物しか人間以外にはゐない處です...
江南文三 「佐渡が島から」
...枯菊の色をたづねて虻(あぶ)来たるどこやらに急に逃げたる冬日かな十二月二十一日 土筆会...
高浜虚子 「六百句」
...すなわち虻を伏せやすくなるのである...
寺田寅彦 「思い出草」
...その芙蓉の花の花びらに虻のとまったほどのこの島にも雨につけ風につけなにかの新しいことがないでもない...
中勘助 「島守」
...虻(あぶ)あまた飛出(とびいづ)る葉越しの秋の空...
永井荷風 「葡萄棚」
...蜘蛛(くも)の巣に引っ掛った虻(あぶ)のようにされて...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...ツクツクボーシほどもある虻(あぶ)が...
葉山嘉樹 「山谿に生くる人々」
...虻は吸いつくことが出来ずに...
本庄陸男 「石狩川」
...或ひはまた虻などがとまつて仰山な身震ひなどをするところなどを近々に見ると...
牧野信一 「陽に酔つた風景」
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松本たかし 「松本たかし句集」
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三好達治 「南窗集」
...虻は狂いまわってビンのガラスのアッチコッチへぶつかりながら...
夢野久作 「虻のおれい」
...虻はどうしても上の方へ来ません...
夢野久作 「虻のおれい」
...あの虻は、チエ子にありがとうってお礼を言って逃げて行きましたのよ...
夢野久作 「虻のおれい」
...とうとう虻をタタキ落として追っかけてゆきました...
夢野久作 「虻のおれい」
...虻は朽木のうろなどに冬を隱れてゐるものだが...
横瀬夜雨 「春」
...牛どもは勝ち誇った水の虻の軍勢の下で...
ルナール Jules Renard 岸田国士訳 「博物誌」
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