...口髭は勿論薄い...
芥川龍之介 「芋粥」
...で、六が砂まぶれの脚絆をすじりもじって、別荘の門を通ったのと、一足違いに、彼は庭下駄で、小石を綺麗に敷詰めた、間々(あいあい)に、濃いと薄いと、すぐって緋色なのが、やや曇って咲く、松葉牡丹(まつばぼたん)の花を拾って、その別荘の表の木戸を街道へぶらりと出た...
泉鏡花 「浮舟」
...その男は非常に長くて細くて、髪の毛は薄いし、鼻はひどい段鼻だしそれに眼といったら気味の悪るいほどひどい籔睨(やぶにらみ)で、ほんとにあんなにひどいのは私見た事も聞いた事もありませんわ、だからその人に睨められると、睨められた方で自分がどこにいるのか見当がつかなくなるようでしたのよ...
チェスタートン Chesterton 直木三十五訳 「見えざる人」
...信仰が薄いからそんなことをするのだと荒々しく叫ぶものも出てくれば...
アーサー・コナン・ドイル Arthur Conan Doyle 大久保ゆう訳 「緋のエチュード」
...薄い鬢(びん)を引っ詰めたその顔は...
徳田秋声 「黴」
...大作は、薄い柳行李から、袴を出しながら「あの節は、拙者を調べにでも参ったのか」「はっ」「わしがおったのでよかった...
直木三十五 「三人の相馬大作」
...あの通り肌の隠れるだけの薄い洋装だったし」早坂勇は反感を抗議と一緒にさらけ出しました...
野村胡堂 「音波の殺人」
...王妃は一番薄い絹地で...
ジョナサン・スイフト Jonathan Swift 原民喜訳 「ガリバー旅行記」
...薄いピンクの部屋着を掛け...
久生十蘭 「あなたも私も」
...薄い唇の端に薄笑いを浮かべ...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「悪の帝王」
...小さい丸い薄いガラスの玉の中に...
正岡子規 「病牀六尺」
...薄い眉の間に縦皺が一つあって...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ある幸福」
...抽斎は自(みずか)ら奉ずること極めて薄い人であった...
森鴎外 「渋江抽斎」
...この望みは薄いであろう...
柳宗悦 「工藝の道」
...客があれば薄い座蒲団(ざぶとん)を敷くだけ...
山本周五郎 「青べか物語」
...薄い蒲団一枚にくるまって横になる...
山本周五郎 「季節のない街」
...それからその汗と泥にまみれた赤黒い顔じゅうに、老人のような皺(しわ)をジワジワと浮上らせて、泣くような笑うような表情を続けていたが、やがて歪んだ、薄い唇の間から、黄色い歯を一パイに剥(む)き出すと、たまらなく気持よさそうなニヤニヤした笑いを顔一面に引拡げて行った...
夢野久作 「斜坑」
...彼女の薄い胸を抱き起した...
吉川英治 「宮本武蔵」
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