...」と謂(い)うと斉(ひと)しく、まだ酒のある茶碗を置いた塗盆を、飛上る足で蹴覆(けかえ)して、羽織の紐(ひも)を引掴(ひッつか)んで、横飛びに台所を消えようとして、「赤いか、」お蔦を見向いて面(おもて)を撫でると、涼しい瞳で、それ見たかと云う目色(めつき)で、「誰が見ても……」と、ぐっと落着く...
泉鏡花 「婦系図」
...一寸民子の姿が目に触れれば気が落着くのであった...
伊藤左千夫 「野菊の墓」
...いかにも金がたんまりあるかのように泰然と落着くことにした...
井上貞治郎 「私の履歴書」
...あまりに甚だしい変り方に呆れて何となく落着く気になれなかったので...
寺田寅彦 「箱根熱海バス紀行」
...いつまでたっても心が落着くということはないものよ...
豊島与志雄 「反抗」
...この室内のてれ加減がどこで落着くか際限なく見えた時...
中里介山 「大菩薩峠」
...……酔の廻(まわ)った頭に、ものを考えるのが億劫(おっくう)になって来ると、結局落着く先は、いつもの「イグノラムス・イグノラビムス」である...
中島敦 「狼疾記」
...落着く先を見極めさへすれば...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...月代を剃ったりして心が落着くと...
久生十蘭 「重吉漂流紀聞」
...静かな庭にかこまれた自分たちの研究室に落着くことができる...
久生十蘭 「地底獣国」
...マールブルクに落着くと...
三木清 「読書遍歴」
...やつた方が話も落着くし市村もじつくりとかんさんに懷(なつ)いてゐた...
室生犀星 「渚」
...堤の蔭だし、前は川なので、落着くのだった...
吉川英治 「大岡越前」
...落着くでしょう」張飛は手がら顔にいう...
吉川英治 「三国志」
...無事に落着くと聞いたが...
吉川英治 「新編忠臣蔵」
...気が落着くと、彼は一時、そこの輦小舎(くるまごや)のうちでスヤスヤ眠ったらしいが、夜が明けてから覚明が粥を持って行ってやると、充血した眼をにぶく開いて、「粥? ……粥ですか……いりません、食べられません」顔を振っていい張るのである、それでも無理に食べさせようとすると、彼は、大熱のあるらしい乾いた唇からさけんだ...
吉川英治 「親鸞」
...自責し続けて来たお駒が――ここに落着くともう今でも会いたいように心がみだれてくる...
吉川英治 「柳生月影抄」
...あらゆる貨物が人為的制限によって束縛されずに自由にその自然価格に落着くに委ねられる時に最も適宜に調整されるのである...
デイヴィド・リカアドウ David Ricardo 吉田秀夫訳 「経済学及び課税の諸原理」
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