...猥雜によつて心の命を傷つけらる可き俺の運命は早くも幼年時代に萌してゐた...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...此寂寞たる冬籠のうちに三藏の心の底に穩かならぬ或考へが萌して來た...
高濱虚子 「俳諧師」
...翻訳の意志は元来此書を読み始めた時から萌してはいたがそれを何時始められるか...
辻潤 「自分だけの世界」
...折角萌しかけてきた一家の喜びに...
豊島与志雄 「神棚」
...私には殺意が萌しました...
豊島与志雄 「化生のもの」
...フト心中に萌した疑念のために...
久生十蘭 「湖畔」
...既に九つか十くらゐの頃から心に萌してゐたといふことである...
北條民雄 「鬼神」
...意外にも又一縷の希望が萌して来たからでございます...
エドガア・アルラン・ポオ Edgar Allan Poe 森林太郎訳 「うづしほ」
...どうも私の挙動が日増に女々しく腺病質の傾向が萌してゐるといふわけで...
牧野信一 「熱海線私語」
...まるで僕自身の胸に新しく艶めいた悩みが萌したかのやうな心地になつて...
牧野信一 「センチメンタル・ドライヴ」
...急にそんな……」彼の調子には不意と棄鉢の気が萌したやうであつた...
牧野信一 「病状」
...早く此頃に萌してゐたらしい...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...漸く萌し漸く熟したのは...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...僕達青年の心の底にも稍憂鬱の蔭が萌し...
淀野隆三 「思ひ出づるまゝに」
...遠見にはそこに人がいる萌しなんぞさっぱり見えないのだった...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
...ローマ帝国に侵入したゲルマン諸族の間に初めて統一の萌しが見え...
和辻哲郎 「鎖国」
...両人の間の不和は前に述べた如く第三回遠征に出発する前に萌していたのであるが...
和辻哲郎 「鎖国」
...この時に萌したのであろう...
和辻哲郎 「鎖国」
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