...猥雜によつて心の命を傷つけらる可き俺の運命は早くも幼年時代に萌してゐた...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...私ばかりではなく笑いさざめている妻の心にもおそらく同じ気持が萌したのであろう...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...翻訳の意志は元来此書を読み始めた時から萌してはいたがそれを何時始められるか...
辻潤 「自分だけの世界」
...折角萌しかけてきた一家の喜びに...
豊島与志雄 「神棚」
...そんな不安も一方に萌してきた...
豊島与志雄 「白日夢」
...即ち宗教上の信仰の動搖より叡山の片隅横河の山中にて既に淨土教の信仰萌し...
内藤湖南 「日本の肖像畫と鎌倉時代」
...意外にも又一縷の希望が萌して来たからでございます...
エドガア・アルラン・ポオ Edgar Allan Poe 森林太郎訳 「うづしほ」
...どうも私の挙動が日増に女々しく腺病質の傾向が萌してゐるといふわけで...
牧野信一 「熱海線私語」
...例によつて全身に異状な熱湯の竜巻が萌して二枚三枚五枚と書きつゞけ...
牧野信一 「水車小屋の日誌」
...まるで僕自身の胸に新しく艶めいた悩みが萌したかのやうな心地になつて...
牧野信一 「センチメンタル・ドライヴ」
...急にそんな……」彼の調子には不意と棄鉢の気が萌したやうであつた...
牧野信一 「病状」
...早く此頃に萌してゐたらしい...
森鴎外 「伊沢蘭軒」
...又さつきのやうな係恋(あこがれ)が萌して来るだらう...
コロレンコ Vladimir Galaktionovick Korolenko 森林太郎訳 「樺太脱獄記」
...大人が書かせたのではあるまいかと云ふ念が、ふと萌した...
森鴎外 「最後の一句」
...誰の胸の中にも不安の念がひそやかに萌して来た...
アンリ・ド・レニエエ Henri de Regnier 森林太郎訳 「復讐」
...遠見にはそこに人がいる萌しなんぞさっぱり見えないのだった...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
...素朴な霊的要求が深く自然児の胸に萌しはじめたという雰囲気からであった...
和辻哲郎 「古寺巡礼」
...その頃からもう何かが萌していたのである...
和辻哲郎 「鎖国」
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