...しかも垢(あか)じみた萌黄色(もえぎいろ)の毛絲(けいと)の襟卷(えりまき)がだらりと垂(た)れ下(さが)つた膝(ひざ)の上(うへ)には...
芥川龍之介 「蜜柑」
...鮫皮(さめかわ)に萌黄糸(もえぎいと)の大菱巻(おおひしまき)の(つか)...
江見水蔭 「備前天一坊」
...もうその土地には興隆の気運が眼に見えぬうちに萌していた...
相馬愛蔵、相馬黒光 「一商人として」
...それは十畳吊の萌黄地(もえぎじ)の近江麻で...
田中貢太郎 「沼田の蚊帳」
...・ここにおちつき草萌ゆる(改作)三月十四日曇...
種田山頭火 「行乞記」
...裏窓からその蚊帳を通して来る萌黄色(もえぎいろ)の光に包まれたこの小さな部屋の光景が...
寺田寅彦 「中村彝氏の追憶」
...固定化し束縛された先輩幹部に対する批判への無形の萌芽が...
戸坂潤 「技術の哲学」
...自然に下からの庶民(当時は大衆をそう云った)の側から萌え出る代りに...
戸坂潤 「世界の一環としての日本」
...羽織がこれ萌黄(もえぎ)の紋綾子(もんりんず)で...
中里介山 「大菩薩峠」
...ここで云わなければもう云う機会はあるまいという気がこの時ふと萌(きざ)した...
夏目漱石 「彼岸過迄」
...ふっとあたまの隅に萌(きざ)したりもするのだった...
林不忘 「あの顔」
...萌えだしたばかりの若葉が縁側の白い障子に映っている...
原民喜 「夢と人生」
...文三の眼より見る時はお勢は所謂女豪(じょごう)の萌芽(めばえ)だ...
二葉亭四迷 「浮雲」
...益々豊富に大衆の中に芽生えて来る文学的萌芽の肥料として...
宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
...真に地方の田畑の間から自由民約の萌芽をもり立てようとするならば...
三好十郎 「天狗外伝 斬られの仙太」
...も一つ心の奥からの悪戯(いたずら)の萌(きざ)しかけたのは...
室生犀星 「性に眼覚める頃」
...大人が書かせたのではあるまいかと云ふ念が、ふと萌した...
森鴎外 「最後の一句」
...武士たちの心に萌えた芽は直ぐ枯れそうになった...
和辻哲郎 「鎖国」
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