...同時にある馬鹿馬鹿しい妄想がふと彼の心に萌(きざ)した...
江戸川乱歩 「一寸法師」
...赤地(あかぢ)の錦の直垂(ひたゝれ)に萌黄匂(もえぎにほひ)の鎧は天晴(あつぱれ)平門公子(へいもんこうし)の容儀(ようぎ)に風雅の銘を打つたれども...
高山樗牛 「瀧口入道」
...平吉はそこで蒲団の萌黄の裏を上にして胡蓙(ござ)の上へ敷いた...
田中貢太郎 「春心」
...近頃になって祖先の地に対するノスタルジアのようなものが萌(きざ)しつつあるのを覚えること...
谷崎潤一郎 「細雪」
...座敷から見渡すと向うの河原の芝生(しばふ)が真青に萌(も)え出(い)でて...
近松秋江 「黒髪」
...焦土の中に萌(も)えいずる緑はうれしかった...
寺田寅彦 「柿の種」
...しかしもしも万一これら質的研究の十中の一から生まれうべき健全なるものの萌芽(ほうが)が以上に仮想したような学風のあらしに吹きちぎられてしまうような事があり...
寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
...又更に封建的残滓を基底として急速に萌(きざ)された資本主義乃至それの〔高度化〕された〔段階を〕表現する各種の立法・行政・司法とを通路として...
戸坂潤 「日本イデオロギー論」
...漸(ようや)く世界動乱の萌(きざ)しが見えて来た...
中谷宇吉郎 「原子爆弾雑話」
...つまり相手は自分より強いのだという恐怖の念が萌(きざ)し始めたのです...
夏目漱石 「こころ」
...もう充分萌(きざ)している頃であった...
夏目漱石 「道草」
...妻(さい)が何か聞くとまるで剣もほろろの挨拶だそうで……」「それは怪(け)しからん訳で――一体少し学問をしているととかく慢心が萌(きざ)すもので...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...六本上からしだれて萌黄(もえぎ)色の芽をふいて居る...
正岡子規 「病牀六尺」
...そして心の底に不快の萌(きざ)すのを...
アルベエル・サマン Albert Samain 森林太郎訳 「クサンチス」
...そこには将来に希望をつなぐことのできる一つの萌芽(ほうが)さえみつけることはできない...
山本周五郎 「柳橋物語」
...顔は茶色でそれを囲つた桂(かつら)の葉は萌黄(もえぎ)で地(ぢ)の塗りは灰色がかつたお納戸(なんど)である...
與謝野寛、與謝野晶子 「巴里より」
...葭萌関(かぼうかん)を破って...
吉川英治 「三国志」
...とうとう葭萌関に逃げ込んだまま...
吉川英治 「三国志」
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