...荒涼たる自然の中に在つて新鮮に緊張せる情調も――悉く羨ましからぬものはない...
阿部次郎 「三太郎の日記 第一」
...海の波の荒涼たるおめきの中に聞くこの笑い声は diabolic なものだった...
有島武郎 「或る女」
...荒涼たるその景色はいつまでも目の前に立ち続いていた...
有島武郎 「或る女」
...はだ寒い荒涼たる風景の中に...
海野十三 「火星兵団」
...質草になりそうなものの一つも無い荒涼たる部屋...
太宰治 「人間失格」
...その荒涼たる人影もない山の端(は)に...
橘外男 「仁王門」
...そこは五十年に一度も鶯(うぐいす)の声が聞かれぬほどの荒涼たる地方です...
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 「レ・ミゼラブル」
...焼野が原の跡が転(うた)た荒涼たる時...
中里介山 「大菩薩峠」
...お銀様はその荒涼たる墓地の中の細道を分けて進んで行くと...
中里介山 「大菩薩峠」
...全くかけ離れた荒涼たる磯辺で...
中谷宇吉郎 「アラスカ通信」
...荒涼たる没詩情のものに化したことなども...
萩原朔太郎 「月の詩情」
...こうしてめいめいがはなはだしく貧弱な防寒具の下(もと)に、はなはだしく寒い、寂しい、荒涼たる、一口にいえば、といっても、いいようのない、そうだ、それは「死」にいやでも応でも考えを押しつけねば置かない関係、すなわち、プロレタリア対寒冷! の、本能的の寂しさの中を、四人は、港の街(まち)のさびしい通りの、明るい二階で暖かいお茶と、お菓子とが待ってることを思って急いで行くのであった...
葉山嘉樹 「海に生くる人々」
...リビア3の荒涼たる地域のことだ...
エドガア・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「沈黙」
...いままでの荒涼たる景色のかわりに...
牧逸馬 「戦雲を駆る女怪」
...更に一層荒涼たるものだった...
宮島資夫 「四谷、赤坂」
...まして去ってしまったあとの家はどんなに荒涼たるものになるだろうと源氏は思った...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...だいたいに下閉伊(しもへい)郡北端の安家(あっか)・普代(ふだい)の小さな流れからこちらがことに荒涼たる草原になっている...
柳田國男 「地名の研究」
...我々をしてこの世の物とは思われない荒涼たる極地へと一歩を踏み出させたのは...
H. P. ラヴクラフト H.P.Lovecraft The Creative CAT 訳 「狂気の山脈にて」
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