...」前後左右どちらを見ても、ただ杳々茫々、脚下を覗いてもやはり際限なく薄みどり色のほの明るさが續いてゐるばかりで、上を仰いでも、これまた蒼穹に非ざる洸洋たる大洞、ふたりの話聲の他には、物音一つ無く、春風に似て春風よりも少しねばつこいやうな風が浦島の耳朶をくすぐつてゐるだけである...
太宰治 「お伽草紙」
...茫々たり、漠々たり、昏々たり、沈々たり...
種田山頭火 「其中日記」
...茫々漠々、真夏の太陽が照りつける、……私はまさに身心のひでりにあえいでゐる...
種田山頭火 「其中日記」
...神聖のフェーラス及び茫々の平原廣きアンテーア...
ホーマー Homer 土井晩翠訳 「イーリアス」
...一方は茫々(ぼうぼう)たる平原さ...
徳冨蘆花 「小説 不如帰」
...蒹葭(けんか)茫々たる浮洲(うきす)が...
永井荷風 「放水路」
...その先は茫々(ぼうぼう)と雲に霞(かす)んでいる...
中里介山 「大菩薩峠」
...左右は孰れも茫々として際涯もないかと思ふ程蜀黍畑が連續して居る...
長塚節 「彌彦山」
...こんなに茫々として気が抜けたものになつてゐるのは...
原民喜 「鎮魂歌」
...奥深い森につづいた茫々の草原の入口で駕籠をおろすと...
久生十蘭 「顎十郎捕物帳」
...茫々たる薄明の野原の真中で急停車した...
久生十蘭 「川波」
...君まさず葛葉ひろごる家なれば一叢(ひとくさむら)と風の寝にこし茫々たる昔の武蔵野の一隅...
平野萬里 「晶子鑑賞」
...大きな茫々たる平原の北方にある...
トマス・ロバト・マルサス Thomas Robert Malthus 吉田秀夫訳 「人口論」
...古い家と草茫々の庭と噴水と...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「トリスタン」
...茫々たる沙漠を見つめております...
夢野久作 「鼻の表現」
...八月十七日この茫々としたロシアが軍備を拡張したときの恐ろしさ――しかし...
横光利一 「欧洲紀行」
...遅い柳絮(りゅうじょ)が一面に吹き荒れた雪のように茫々として舞い上った...
横光利一 「上海」
...こう草茫々(ぼうぼう)としたまま方々釘付けにしてあるんだろう?」耳をつねって考えても...
吉川英治 「鳴門秘帖」
便利!手書き漢字入力検索