...朝がお早いのでございますからもうお寝(やす)みにならないと明日茫(ぼ)んやりなさいますよ...
鈴木三重吉 「桑の実」
...その上を打ちたたいても魚やジャコウネズミがおどろいて茫然となることはないだろう...
ソーロー Henry David Thoreau 神吉三郎訳 「森の生活――ウォールデン――」
...愈心惑ひて只茫然と野中(のなか)に彳(たゝず)みける...
高山樗牛 「瀧口入道」
...」前後左右どちらを見ても、ただ杳々茫々、脚下を覗いてもやはり際限なく薄みどり色のほの明るさが続いてゐるばかりで、上を仰いでも、これまた蒼穹に非ざる洸洋たる大洞、ふたりの話声の他には、物音一つ無く、春風に似て春風よりも少しねばつこいやうな風が浦島の耳朶をくすぐつてゐるだけである...
太宰治 「お伽草紙」
...茫然(ぼんやり)と突っ立っている私の耳にも...
橘外男 「蒲団」
...あなかしこ天文きのえとら七月図書(づしよ)どの―――河内介は戦場の砂埃の中でその紙片をひろげたまゝ暫く茫然(ぼうぜん)と立ちつくした...
谷崎潤一郎 「武州公秘話」
...宛(さなが)ら山嶽を望むが如く唯茫然(ぼうぜん)としてこれを仰ぎ見るの傾きあるに反し...
永井荷風 「浮世絵の鑑賞」
...由来彼女の光茫はその輝きを益すばかりである...
中原中也 「デボルド―※[#濁点付き片仮名ワ、1-7-82]ルモオル」
...陳列戸棚の前を茫然と歩いてゐる...
原民喜 「鎮魂歌」
...今が何時なのか分らないぐらい茫然としてしまうことがある...
原民喜 「遥かな旅」
...白く茫然とした頭を持ち続けて歩いて居た...
牧野信一 「公園へ行く道」
...赤い顔に白髪髯(しらがひげ)を茫々(ぼうぼう)と生(は)やして酒嗅(さけくさ)い呼吸(いき)を吐(は)きながら...
夢野久作 「白髪小僧」
...泥足袋のまま茫然と眼を据えていた...
夢野久作 「名君忠之」
...草茫茫(ぼうぼう)たる廃屋でも何でも...
吉川英治 「江戸三国志」
...徐寧(じょねい)は茫然...
吉川英治 「新・水滸伝」
...ただ茫然(ぼうぜん)としてしまう...
吉川英治 「鳴門秘帖」
...……あの奥州(みちのく)の九郎が訪ねて見えたとか」頼朝は、口のうちで呟くように云いながら、茫然と、その眼は、二十年前の思い出をあわただしく心の奥で索(さぐ)っていた...
吉川英治 「源頼朝」
...まだ茫々(ぼうぼう)たる野水や見渡す限りな田や草原であった時代である...
吉川英治 「忘れ残りの記」
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