...眼の前の書類は全部片付け終ったがそのまま空になった未決の籠を眺めて茫然(ぼんやり)と椅子の肘に頬杖突きながら空虚(うつろ)のような眼を瞠(みは)っていた私の前に...
橘外男 「陰獣トリステサ」
...ジャヴェリは茫然と突っ立っていたようであったが...
橘外男 「ナリン殿下への回想」
...驚くよりは茫然(ぼうぜん)と見惚(みと)れてしまった...
谷崎潤一郎 「細雪」
...どちらが本当だ?」笹尾は茫然として矢島さんの顔を眺めた...
豊島与志雄 「過渡人」
...ただその前後は茫漠として少しも見分けがつかなかった...
豊島与志雄 「蘇生」
...いよいよ馴れたものだと兼太郎は茫然(ぼうぜん)とその顔を見詰めた...
永井荷風 「雪解」
...一面茫漠たる、花崗岩砂のきらめく河原は、ゆるやかな中高の弧を描いて、末広がりに双翼をひろげる...
中村清太郎 「ある偃松の独白」
...とぐろの中に巻き込まれる素人(しろうと)は茫然(ぼんやり)してしまうだけである...
夏目漱石 「思い出す事など」
...茫と目が覚めている私は...
原民喜 「翳」
...茫乎(ぼうこ)としてこれを求(もとむ)るに難(かた)きものあるべし...
福沢諭吉 「旧藩情」
...茫然とあたりを見し...
ブロンテイ 十一谷義三郎訳 「ジエィン・エア」
...この暗合の不思議さはしばらくのあいだ僕をまったく茫然(ぼうぜん)とさせたよ...
エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳 「黄金虫」
...ベナは茫然自失(ぼうぜんじしつ)と言ったところ...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「謎の四つ指」
...過去世に人間の遠祖が当身(そのみ)巨大怪異の爬虫輩の強梁跋扈(きょうりょうばっこ)に逢った事実を幾千代後の今に語り伝えて茫乎(ぼうこ)影のごとく吾人の記憶に存するものが竜であるという説のみでは受け取れず...
南方熊楠 「十二支考」
...彼がみすみすその獲物(えもの)をすてて門を出てゆくのをただ茫然として見ていた*...
ミシェル・エーケム・ド・モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 関根秀雄訳 「モンテーニュ随想録」
...――茫然と、そこに立ち、涙をたれたまま、市十郎は暫く大きな呼吸(いき)をなだめていた...
吉川英治 「大岡越前」
...茫々(ぼうぼう)十七年...
吉川英治 「茶漬三略」
...だが、二人とも、変ったなあ』『お師匠様こそ』三名は、お互いに、茫然として、何から話そうという事も、俄(にわか)に思い出せなかった...
吉川英治 「山浦清麿」
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