...格別の風もないのに海面は色濃く波打ち騒いだ...
有島武郎 「或る女」
...漆(うるし)よりも色濃くむらむらと立ち騒いでいるのは古い杉(すぎ)の木立(こだ)ちだった...
有島武郎 「或る女」
...ひどく敏感に卑屈な反映を見せたりして云うに云われぬいやァな空気がだんだん色濃く風のように湧き起っていった...
大阪圭吉 「三狂人」
...その民衆思想は色濃く倫理的色調を帯びていた...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...色濃く染めた紐のついている小刀を作つて...
稗田の阿禮、太の安萬侶 武田祐吉訳 「古事記」
...色濃くなつてまゐりまして...
太宰治 「右大臣実朝」
...あの服装の失敗だけが色濃く胸中に残つてゐるくらゐのもので...
太宰治 「津軽」
...色鉛筆でくつきり色濃くしたためられてゐた...
太宰治 「火の鳥」
...はじめから、それが承知であの人のところへまいりましたのに、いま急に、あの人が、最初でないこと、たまらぬ程にくやしく、うらめしく、とりかえしつかない感じで、あの人の、まえの女のひとのことも、急に色濃く、胸にせまって来て、ほんとうにはじめて、私はその女のひとを恐ろしく、憎く思い、これまで一度だって、そのひとのこと思ってもみたことない私の呑気(のんき)さ加減が、涙の沸いて出た程に残念でございました...
太宰治 「皮膚と心」
...この短篇集、「晩年」は、年々歳々、いよいよ色濃く、きみの眼に、きみの胸に滲透して行くにちがいないということを...
太宰治 「もの思う葦」
...こゝにも秋が色濃くあらはれるだらう...
種田山頭火 「其中日記」
...童姿の供はそこにぼんやりとその輪郭を薄暮の空氣の中に色濃く見せてゐるけれども...
田山花袋 「道綱の母」
...新しい気運は絶えず色濃く醸し出されてゐる...
田山録弥 「私と外国文学」
...臙脂の色濃く紫にまがふ...
永井荷風 「来青花」
...月のない夜闇がひとしお色濃く感じられるようになった...
久生十蘭 「うすゆき抄」
...この決定的な暴風の中でまた米の問題が色濃くなる...
横光利一 「夜の靴」
...まだ相当に色濃く矢代には映っていた...
横光利一 「旅愁」
...はやくも車中不安の色濃く「危険はない?」「何時間」「何キロ」などと質疑応答しきりである...
吉川英治 「随筆 新平家」
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