...頬(ほお)には血液がちくちくと軽く針をさすように皮膚に近く突き進んで来るのが感ぜられた...
有島武郎 「或る女」
...湿気を充分に含んだ風は裾前(すそまえ)をあおってぞくぞくと膚に逼(せま)った...
有島武郎 「或る女」
...此の両国に於ては英国と違いまして、証文を認めまする時に必ず印形(いんぎょう)と云う物を用いまする事になって居りまして、柘植(つげ)或は金銀等へ自分の姓名を彫付け、是を肉にて姓名(なまえ)の下へ捺しますけれども、時といたして印形を用いず、只親指に墨を塗り姓名の下に押す、即ち拇印(ぼいん)爪印(つめいん)とも申ます、平常(ふだん)実印を用いても、極(ごく)八釜(やかま)しい事、即ち調べを受けて証拠でも取られるというような時に至って、必ず拇印をいたしますが、支那国に於ては、人が兵隊になる時、手一面に墨を塗り、兵隊になったという受書(うけしょ)の下に手を捺させ、若し兵隊逃亡することがあれば、其手形を以て在所を探ねるが、何うして斯様のような不思議の事あるか、拇印ならば誰が捺したのか一向証拠にならん、兵隊に手の形を受書の下に捺させても、どうして是が当人逃げたる際在所(ありか)を探ねる助けになるか、其原因を段々探って見ますると、極(ご)く昔からあります風習で御座いますが、人間の手の筋、皮膚の模様(註、これが隆線に当る)人毎に変りやする(註、「何々しやする」というのは当時の落語家の口調、「します」の意)...
江戸川乱歩 「探偵小説の「謎」」
...人種学上吾人人類を、その皮膚の色、脳の形状もしくは容積、身長の如何(いかん)、顔面の輪郭如何(いかん)、髪毛の断面如何(いかん)、色沢如何(いかん)、形状如何(いかん)というが如き標準によってこれを幾種に区分するとも、それは一向差支(さしつか)えは無いが、しかしそれに由って発見されたる幾多の相異点が、直ちに人格の優劣を分ち、感情の親疎を来し、自由なるべき吾人全人類の友誼的関係を阻碍(そがい)する、永久に越ゆべからざる、一大障壁を築くというに至っては没人道もまた甚だしきもの、而(しか)してかかる没人道の習癖の一掃し得られざるがために、幾度もこの世に戦禍を将来するという事は愚の骨頂でなければならぬ...
大隈重信 「永久平和の先決問題」
...艶のない皮膚のいろや隈を帯びてたるんだ下瞼をみれば...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...皮膚感觸をもてあまして擽つたげにちよこまか...
太宰治 「お伽草紙」
...皺(しわ)だらけな老僧の皮膚と...
谷崎潤一郎 「陰翳礼讃」
...その人の皮膚のある特徴を発見してそれを人に話したので...
寺田寅彦 「備忘録」
...栄養不良の皮膚の色などを見ると...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...健康さうな皮膚の色...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...皮膚の艶(つや)もよくなり...
林芙美子 「浮雲」
...ぞっと鳥膚がたった...
久生十蘭 「あなたも私も」
...完膚なきまでに中傷しました...
平出修 「計画」
...とび色のにこ毛に蔽(おお)われた皮膚からも人間の感じは受け取れなかった...
本庄陸男 「石狩川」
...背骨の凸所はところ/″\皮膚が破れてゐた...
牧野信一 「夜見の巻」
...豊満な皮膚の色と...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...蒼白い彼女の皮膚をいよいよ冴えた蒼白さに射かえして...
室生犀星 「幻影の都市」
...完膚(かんぷ)なきまで...
吉川英治 「新書太閤記」
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