...じっと腕組みをなすったまま...
芥川龍之介 「俊寛」
...御迷惑ついでになんとかしてやっていただく事はできないでしょうか」事務長は腕組みをしたまままじまじと木村の顔を見やりながら聞いていたが...
有島武郎 「或る女」
...その時義経少しも騒がず、落ちた菫(すみれ)色の絹に風が戦(そよ)いで、鳩の羽(は)はっと薫るのを、悠々と拾い取って、ぐっと袂(たもと)に突込んだ、手をそのまま、袖引合わせ、腕組みした時、色が変って、人知れず俯向(うつむ)いたが、直ぐに大跨(おおまた)に夫人の後について、社(やしろ)の廻廊を曲った所で追着(おッつ)いた...
泉鏡花 「婦系図」
...むっとしたように腕組みをして...
梅崎春生 「狂い凧」
...腕組みして、また別人のように黙々と瞑想に入るごとくであった...
大鹿卓 「渡良瀬川」
...分別ありげに腕組みをした...
太宰治 「乞食学生」
...腕組みして渋面つくり...
太宰治 「新釈諸国噺」
...正面の右に坐った新吉は、テラテラした頭に血の気の美しい顔、目のうちにも優しい潤(うる)みをもって、腕組みしたまま、堅くなっていた...
徳田秋声 「新世帯」
...「お組頭で神尾主膳殿……」と言って腕組みをしました...
中里介山 「大菩薩峠」
...いよいよかたく腕組みをしてしまいました...
中里介山 「大菩薩峠」
...私はまた腕組みをして世の中を眺(なが)めだしたのです...
夏目漱石 「こころ」
...「生きるとはなんらかの意匠を与えられることだ」という問題の前に腕組みした...
原口統三 「二十歳のエチュード」
...そして彼等が何にでもなれる馬鹿げた笑劇をこれ以上演じることを禁じた」この議論の最中にヴォーケ夫人は奇跡的に健康を回復し、姿勢を正し、腕組みをして、目をはっきりと見開いた...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...これでは毎日告別式だ」タヌもどうやら不承服な面持で腕組みをしていたが...
久生十蘭 「ノンシャラン道中記」
...どこかへ行ってしもうたよ」「それは、いつのことじゃ?」「あの、仲直りの翌る朝よ」「そうか」金五郎は、腕組みして、複雑な苦笑をたたえていたが、「新公、お前、お京のことで、友田喜造から、脅迫されたらしいな?」「脅迫?……友田から?……そんなことはない」「あの晩、おれとお京とが、途中から、居らんようになったもんじゃけ、大層、嚇(おど)かされたちゅうじゃないか――よくも、おれの顔に泥を塗ったな...
火野葦平 「花と龍」
...おれがもらう知行はおぬしがもらうも同じじゃ」こう言ったぎり権兵衛は腕組みをして顔をしかめた...
森鴎外 「阿部一族」
...各位は首を捻り、腕組みをし、貧乏ゆすりをし、俄(にわ)かに咳(せき)をし鼻をかみしめて、それぞれ腹蔵なく妙案を開陳したが、やがて口の重い金太が、「うん、……そのことで考げえたもんだったが」そう重々しく云って銀太を見た、「あのう、それ、あれよ、……神田の柳原の土堤(どて)に、うす馬鹿の乞食がいたもんだろう」「青瓢箪(あおびょうたん)みてえなあの若造か」「うん、あいつだ、……あいつでやれねえかと、いま考げえたんだったんだが」「だっておめえ、あのうす馬鹿をどうするんだ」「うん、それなんだが、あれをだな、なんとかくふうして、天一坊みてえに仕立ててだ、そうして大家に押っ付けたらどうか」「あのうす馬鹿の乞食をか」「あのうす馬鹿の乞食をよ」金太は右足の拇指を静かに動かした、「あいつによ、うん、お墨付とか、短刀とか、まあそういった、……こいつはありきたりの物で、なんとかうまくまじなってよ、こんな物を持ったこんな人間がいたんだが、こう云って大家に押っ付ければ」「うまい、その件は絶妙じゃ、それじゃ」不識斎先生が、思わず前へ乗出したので、着物の膝が――地が脆(もろ)くなっていたのだろうが――びりびりと大きく裂けて口をあいた...
山本周五郎 「長屋天一坊」
...静かに腕組みを解き...
和辻哲郎 「古寺巡礼」
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