...価額も一般の肥料商から今まで買ったのよりは安く...
犬田卯 「米」
...肥馬に跨(またが)る貴公子を以て普通人間と思うなかれ...
内村鑑三 「基督信徒のなぐさめ」
...炎症のために皮膚が次第に肥厚(はれあが)って...
大阪圭吉 「とむらい機関車」
...両手を見るとまっかになって指が急に肥(ふと)ったように感じられた...
寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
...そして向うの隅から「肥桶(こえたご)やあーい」と声を合した...
豊島与志雄 「少年の死」
...「丸山――」「何だ」「おたがいは亡者だな」「まあ、そんなものだろう」「宙宇(ちゅうう)に迷ってるんだ」「まあ、そんなものだ」「天へも上れず」「地へも潜(くぐ)れず、かな」「東の方(かた)、江戸表も鬼門」「西の方、長州路は暗剣」「のめのめと故郷へは帰れず」「そうかと言って、また来た道を引返すのはうんざりする」「所詮(しょせん)……」「考えてみると……」「我々は、どこへ行こうと言って思案するよりは……」「何の目的で、こうして旅をして歩かねばならないのか」「それよりはいっそ――何故に我々は生きていなけりゃならねえのか、そいつが先だ」「むずかしいことになってしまったぞ!」「考えてみろ、おれも、貴様も、何のために生きているのだ」「そいつは困る」「困るたって、それを解決しなければ、永久にこうして亡者として、八方塞がりの籠の中を、うろうろ彷徨(うろつ)いて、無意味に行きつ戻りつしていなけりゃならん」「なにぶんやむを得んじゃないか」「ところが、今やそのやむを得ざることが、得られなくなってしまった――おれはもう、こうして旅から旅の亡者歩きに大抵倦(あ)きてしまったよ」「だって、やむを得んじゃないか、君ほどの腕を持っていながら、この手腕家を要する非常時代に、いっこう用うるところがない、拙者ときた日には、君ほどの腕のないことは勿論(もちろん)だが、儒者となるには学問が足りない、医者となるべく術が不足している、英学をかじったが物にならず、仕官をするにはものぐさい、日雇に雇われるには見識があり過ぎる――亡者としてうろつくよりほかには道がないじゃないか」「その亡者として生きる道がもう、つくづくおれはいやになったのだ」「では、どうすればいいんだ」「考えてみろ」「考えろったって、この上に考えようはありゃせん」「斎藤篤信斎は、剣術を使わんがために生きている」「うむ」「高杉晋作は、尊王攘夷のために生きている」「うむ」「徳川慶喜は、傾きかけた徳川幕府の屋台骨のために生きなけりゃならん」「うむ」「西郷吉之助は、薩摩に天下を取らせんがために生きている」「うむ」「小栗上野(おぐりこうずけ)は、幕府の主戦組のために生きている」「うむ」「勝麟(かつりん)は、勤王と倒幕の才取(さいとり)のために生きている」「うむ」「岩倉具視(ともみ)は、薩長を利用して、薩長に利用せられざらんがために生きている」「うむ」「土佐の山内や、肥前の鍋島は、薩長だけに旨(うま)い汁を吸わせてはならないために生きている」「うむ」「会津、桑名は、徳川宗家擁護のために生きなけりゃならん」「うむ」「さて、それから宇津木兵馬は――」「は、は、は、少し、人物のレヴェルが変ってきたな」「宇津木兵馬は、兄の仇を討たんがために生きている」「うむ」「お銀様という女は、父に反抗せんがために生きている」「うむ」「机竜之助は、無明(むみょう)の中に生きているのだ――ところで、仏頂寺弥助と、丸山勇仙は、何のために生きているのだ」こう言って、仏頂寺弥助のカラカラと笑った声が、またもすさまじく、森閑たる小鳥峠の上にこだましました...
中里介山 「大菩薩峠」
...背の低い・小肥(こぶと)りに肥った・眼鏡の奥から商人風の抜目の無さそうな(絶えず相手の表情を観察している)目を光らせた・短い口髭(くちひげ)のある・中年の校長が...
中島敦 「環礁」
...地代と肥料代差引いたらあとに何が残るかよおっかあはあんまり馬鹿臭いから埋めといて春までまったらと言うけんど年貢と税金だけは食わんねいでいてもおさめんにゃなんねい...
中島葉那子 「馬鈴薯階級の詩」
...今日民間でも時とするとその肥厚している黄色の根を薑擦子(わさびおろし)で擦(す)りおろしこれを酢で練って...
牧野富太郎 「植物記」
...しかし現在の価格では啻に最良の土地で肥育しても償うばかりでなく...
トマス・ロバト・マルサス Thomas Robert Malthus 吉田秀夫訳 「人口論」
...くずれかかった煉瓦(れんが)の肥溜(こえだめ)のとこへあつまりました...
宮沢賢治 「イーハトーボ農学校の春」
...例えば農家などで、廐肥の運搬に、田と廐との間を幾度となく往復することを「まねっくる」などというのと源は同じであり、学と覚と、子と見の違いこそあれ、は「さとる」という同一の意味であるといったような論旨であった...
柳田国男 「故郷七十年」
...肥前の基肄(きい)の三城を修繕せしめられた記事があります...
柳田国男 「山の人生」
...肥えたのも痩せたのもいた...
山本周五郎 「似而非物語」
...竹次には肥えた田を五段歩と...
山本周五郎 「菊千代抄」
...肥後の五島列島から慶南...
夢野久作 「近世快人伝」
...小肥(こぶと)りで色はくろいが...
吉川英治 「野槌の百」
...肥前の平戸沖あたりの小さな島を全部買ひ切つて一人して其處へ移り牛や鷄を放し飼にして樂しんでゐた...
若山牧水 「樹木とその葉」
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