...実は怠惰(たいだ)を悪徳としない美風を徳としているのである...
芥川龍之介 「第四の夫から」
...それには怠惰の美風のほかにも...
芥川龍之介 「第四の夫から」
...この家族制度は日本の傳統的美風とされたが...
石原莞爾 「新日本の進路」
...殊に欧風の晩食を重ずることは深き意味を有するらしい、日中は男女老幼各其為すべき事を為し、一日の終結として用意ある晩食が行われる、それぞれ身分相当なる用意があるであろう、日常のことだけに仰山に失するような事もなかろう、一家必ず服を整え心を改め、神に感謝の礼を捧げて食事に就くは、如何に趣味深き事であろう、礼儀と興味と相和して乱れないとせば、聖人の教と雖も是には過ぎない、それが一般の風習と聞いては予は其美風に感嘆せざるを得ない、始めて此の如き美風を起せる人は如何なる大聖なりしか、勿論民族の良質に基くもの多からんも、又必ずや先覚の人あって此美風の養成普及に勉めたに相違あるまい、栽培宜しきを得れば必ず菓園に美菓を得る如く、以上の如き美風に依て養われたる民族が、遂に世界に優越せるも決して偶然でないように思われる、欧洲の今日あるはと云わば、人は必ず政体を云々し宗教を云々し学問を云々す、然れども思うに是根本問題にはあらず、家庭的美風は、人というものの肉体上精神上、実に根本問題を解決するの力がある、其美風を有せる歌人にあっては、此研究や自覚は遠き昔に於て結了せられたであろう、多くの人は晩食に臨で必ず容儀を整え女子の如きは服装を替えて化粧をなす等形式六つかしきを見て、単に面倒なる風習事々しき形式と考え、是を軽視するの趣あれど、そは思わざるも甚しと云わねばならぬ、斯く式広を確立したればこそ、力ある美風も成立って、家庭を統一し進んで社会を支配することも出来たのである、娯楽本能主義で礼儀の精神がなければ必ず散漫に流れて日常の作法とはならぬ、是に反し礼儀を本能とした娯楽の趣味が少ければ、必ず人を飽かしめて永続せぬ、礼儀と娯楽と調和宜しきを得る処に美風の性命が存するのである、此精神が茶の湯と殆ど一致して居るのであるが、彼欧人等がそれを日常事として居るは何とも羨しい次第である、彼等が自ら優等民族と称するも決して誇言ではない、兎角精神偏重の風ある東洋人は、古来食事の問題などは甚だ軽視して居った、食事と家庭問題食事と社会問題等に就て何等の研究もない、寧ろ食事を談ずるなどは、士君子の恥ずる処であった、(勿論茶の湯の事は別であれど)恐らくは今日でも大問題になって居るまい、世人は食事の問題と云えば衛生上の事にあらざれば、美食の娯楽を満足せしむる目的に過ぎないように思うて居る、近頃は食事の問題も頗る旺であって、家庭料理と云い食道楽と云い、随分流行を極めているらしいが、予は決してそれを悪いとは云わねど、此の如き事に熱心なる人々に、今一歩考を進められたき希望に堪えないのである、単に美食の娯楽を満足せしむることに傾いては、家庭問題社会問題との交渉がない訳になる、勿論弦斎などの食道楽というふうには衛生問題もあり経済問題もあるらしいが、予の希望は、今少しく高き精神を以て研究せられたく思うのである、美食は美食其物に趣味も利益もあるは勿議であれど、食事の問題が只美食の娯楽を本能とするならば、到底浅薄な問題で士君子の議すべき問題ではない...
伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
...家庭問題社会問題より見れば欧人の晩食人事は実に美風である...
伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
...浦島は「姿容秀美風流無類」の男子なり...
高木敏雄 「比較神話学」
...美風善俗を養ふべし...
竹越三叉 「深憂大患」
...わが家族制度の美風であり...
戸坂潤 「世界の一環としての日本」
...善良な美風が破壊される時に...
中里介山 「大菩薩峠」
...こんな美風が成立するのだ...
夏目漱石 「吾輩は猫である」
...大和(やまと)民族の美風なることを信じたいのである...
新渡戸稲造 「自警録」
...家庭生活の善良勤倹な美風をどんなに後になって毒したかしれない...
長谷川時雨 「明治大正美女追憶」
...日本ではいったいに知識や学問を楽しむという美風はあるが...
三上義夫 「文化史上より見たる日本の数学」
...その美風を破るようなことはとんでもないことだ」と言った...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...次第にこの善良なる美風を吹き破り始めたのであった...
夢野久作 「東京人の堕落時代」
...古来の美風良俗が地を払って行くような感じを毎日受けさせられるのが不愉快ですからね...
夢野久作 「霊感!」
...況(いはん)やすべて秀でたる父祖の美風を継げる民...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集拾遺」
...高尚な美風とされていた...
吉川英治 「宮本武蔵」
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