...暗(やみ)を縫うて見え隠れに螢が流れる...
石川啄木 「鳥影」
...その間を縫う径(みち)を通るとき...
梅崎春生 「桜島」
...林の間を縫う坂道を下って行った...
海野十三 「千早館の迷路」
...彼は松原に沿うた櫟林(くぬぎばやし)の中を縫うている小路(こみち)を抜けて往った...
田中貢太郎 「蟇の血」
...華(はな)やかな声、艶(あで)やかな姿、今までの孤独な淋しいかれの生活に、何等の対照! 産褥から出たばかりの細君を助けて、靴下を編む、襟巻(えりまき)を編む、着物を縫う、子供を遊ばせるという生々した態度、時雄は新婚当座に再び帰ったような気がして、家門近く来るとそそるように胸が動いた...
田山花袋 「蒲団」
...樫鳥(かしどり)や山鳩(やまばと)や山鴫(やましぎ)のような鳥類が目にも止まらぬような急速度で錯雑した樹枝の間を縫うて飛んで行くのに...
寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
...予診をとる学生の白衣がその間を縫うて動いている...
永井隆 「長崎の鐘」
...物を縫うている女の形を見れば...
中里介山 「大菩薩峠」
...秘蔵の人形の着物を縫うてやつたり...
中谷宇吉郎 「『団栗』のことなど」
...岩の裾(すそ)を縫うて迂回(うかい)して上(のぼ)る小径(こみち)とから成り立っていた...
夏目漱石 「思い出す事など」
...四五間平らな路を縫うように突き当った所で...
夏目漱石 「坑夫」
...その間を縫う杣道は...
野村胡堂 「大江戸黄金狂」
...物を縫う女は一人置いてある...
久生十蘭 「鈴木主水」
...一つの型紙でもって電気鋏で一度に数百枚の切れ地を切って電気ミシンで縫う...
宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
...ただ、ボロッ着物や袋なぞのツクロイ仕事をするだけが、じょうぶ好きでね、雨や雪で、野良へ出られねえ日は、ヒジロんとこで、ボロ縫う、そんだけが道楽だ...
三好十郎 「おりき」
...この簡素な太い力の間を縫う細やかな曲線と色との豊富微妙な伴奏は...
和辻哲郎 「偶像崇拝の心理」
...糸を縒ってほころびを縫うのが普通のことであるのに...
和辻哲郎 「日本精神史研究」
...この地獄に似る混沌海の波を縫うて走る一道の光明は「道徳」である...
和辻哲郎 「霊的本能主義」
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