...社会問題攻究論者などは、口を開けば官吏の腐敗、上流の腐敗、紳士紳商の下劣、男女学生の堕落を痛罵するも、是が救済策に就ては未だ嘗って要領を得た提案がない、彼等一般が腐敗しつつあるは事実である、併しそれらを救済せんとならば、彼等がどうして相率て堕落に赴くかということを考えねばならぬ、人間は如何な程度のものと雖も、娯楽を要求するのである、乳房にすがる赤児から死に瀕せる老人に至るまで、それぞれ相当の娯楽を要求する、殆ど肉体が養分を要求するのと同じである、只資格ある社会の人は其娯楽に理想を持って居らねばならぬ、乍併其理想的娯楽即品位ある娯楽は、修養を持って始めて得るべきものであって、単に金銭の力のみでは到底得ることは出来ぬ、予を以て見れば、現時上流社会堕落の原因は、幸福娯楽、人間総ての要求は、力殊に金銭の力を以て満足せらるるものと、浅薄な誤信普及の結果である...
伊藤左千夫 「茶の湯の手帳」
...大阪の紳商園村家に嫁いでいる夫人の手前でお茶があり...
谷崎潤一郎 「細雪」
...盗賊が紳商に化けて泊っていた時の話...
寺田寅彦 「嵐」
...吾人に向かって今日の有名なるわが邦の紳商は封建時代のいわゆる官吏の一部ともいうべき御用達といくばくの相違あるかと問わば...
徳富蘇峰 「将来の日本」
...今は紳商とて世に知られたるかの山木ごときもこの賜物(たまもの)を頂戴(ちょうだい)して痛み入りしこともたびたびなりけるが...
徳冨蘆花 「小説 不如帰」
...百の紳商(しんしょう)...
夏目漱石 「野分」
...されども世は華族、紳商、博士、学士の世である...
夏目漱石 「野分」
...日頃大達者(おおだっしゃ)と立てられてその名前は家々の守護神の様に人の口に膾炙(かいしゃ)している大紳商...
シモン・ニューコム 黒岩涙香訳 「暗黒星」
...華族や紳商が株主になって...
長谷川時雨 「渡りきらぬ橋」
...貞子夫人の姉たき子は紳商益田孝(ますだたかし)男爵の側室である...
長谷川時雨 「明治美人伝」
...或(あ)るとき使節がアムストルダムに行(いっ)て地方の紳士紳商に面会...
福澤諭吉 「福翁自伝」
...紳商連のお道楽の集りらしく...
古川緑波 「古川ロッパ昭和日記」
...渋沢栄一などときの紳商に圓朝をまじえた人たちが...
正岡容 「圓朝花火」
...気楽そうな紳商たちが...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「小フリイデマン氏」
...また広間のもう一つの端からは、ほとんど舞台に達するまで、花で飾られた長いテエブルがいくつも並んでいて、そのテエブルでヤコビイ弁護士の賓客たちが、春のビイルと子牛の焼肉とを味わっている――法律家、将校、紳商、芸術家、高級官吏たちと、その夫人令嬢たちとで、たしかに百五十人以上の紳士淑女である...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ルイスヒェン」
...車上の者が紳商貴顕のたぐいである場合には...
吉川英治 「かんかん虫は唄う」
...高瀬氏は横浜一流の紳商であり...
吉川英治 「忘れ残りの記」
...主人の続木氏はやや背は足りないが色白で小肥りな紳商然たる人で...
吉川英治 「忘れ残りの記」
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