...唇の紅い切れの長い口元に力を入れていた...
田中貢太郎 「白い花赤い茎」
...眼瞼(まぶた)の裏の紅い処をひっくりかえして白眼を出させたり...
谷崎潤一郎 「少年」
...松原の中にある遊廓――欄干には紅い蒲団や房のついた枕などがくつきりと午後の日影に照されて干されてあつた...
田山録弥 「百日紅」
...康有為や梁啓超がヨコハマで出していた何とかいう紅い表紙の雑誌などを読んでもいたが...
津田左右吉 「学究生活五十年」
...「殿様」「覚悟は宜いな」郷太郎は二度太刀を振り冠(かぶ)りましたが、紅い唇、白い喉、碧い眼の、言いようもない魅惑的なお鳥の顔に逢うと、二度とも刀をおろして、息を継ぎました...
野村胡堂 「裸身の女仙」
...時々、思ひもかけない、唇の紅い女が、外国人と手を組んで、階段を降りて来るのを見ると、ゆき子は、珍しいものでも見るやうに、じいつとその派手なつくりの女を見つめた...
林芙美子 「浮雲」
...鳥は群れを乱して散った朝おれは夜明けの空に渦を描いて北に飛ぶ鶴を見たツルチュクの林を分け欝蒼たる樹海を越えて国境へ―――火のやうに紅い雲の波を貫いて...
槇村浩 「間島パルチザンの歌」
...そして其の底に灰(はひ)の氣に籠(こ)められながら紅い花の揺(ゆら)いでゐるのを見るやうな心地になつてゐた...
三島霜川 「平民の娘」
...そのみがかれた天河石の板の上を貴族風の月と紅い火星とが少しの軋りの聲もなく滑って行く...
宮澤賢治 「うろこ雲」
...更にもう一つの紅い玉を思い泛べた...
宮本百合子 「毛の指環」
...柘榴のやうに透明な紅い色をたたへてゐた...
室生犀星 「故郷を辞す」
...この中に緑の衣に紅い袈裟をつけた僧侶がいる...
矢田津世子 「※[#「やまいだれ+句」、第4水準2-81-44]女抄録」
...紅い糸屑がその裾についてゆく...
吉川英治 「篝火の女」
...紅い夜霧の彼方(かなた)へ薄れて行った...
吉川英治 「新書太閤記」
...「ご相談があるんですの」「私に」「あの……実は……」うす紅い血のいろが...
吉川英治 「親鸞」
...ぱっと紅い血がのぼった...
吉川英治 「親鸞」
...そのうす紅いろのみずみずしい嫩葉がさながらその花びらを護る様にもきおい立って萌えて居る...
若山牧水 「みなかみ紀行」
...裸で紅い腰巻とか...
和辻哲郎 「古寺巡礼」
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