...彼は立つ瀬がなくなるのだ...
有島武郎 「星座」
...私の立つ瀬はありやしない...
伊藤野枝 「惑ひ」
...しかしそれで黙って引き下っていては僕の立つ瀬はないじゃありませんか...
梅崎春生 「ボロ家の春秋」
...迚(とて)も立つ瀬が無かつたから...
薄田泣菫 「茶話」
...でも色が白すぎて、そこんとこが気にいらないけど、でも、それでは貞子もあんまり慾張りね、がまんするわよ、兄ちゃん、こんど泣いた? 泣いたでしょう? いいえ、ハワイの事、決死的大空襲よ、なにせ生きて帰らぬ覚悟で母艦から飛び出したんだって、泣いたわよ、三度も泣いた、姉さんはね、あたしの泣きかたが大袈裟で、気障(きざ)ったらしいと言ったわ、姉さんはね、あれで、とっても口が悪いの、あたしは可哀想な子なのよ、いつも姉さんに怒られてばっかりいるの、立つ瀬が無いの、あたし職業婦人になるのよ、いい勤め口を捜して下さいね、あたし達だって徴用令をいただけるの、遠い所へ行きたいな、うそ、あんまり遠くだと、兄ちゃんと逢えないから、つまらない、あたし夢を見たの、兄ちゃんが、とっても派手な絣(かすり)の着物を着て、そうして死ぬんだってあたしに言って、富士山の絵を何枚も何枚も書くのよ、それが書き置きなんだってさ、おかしいでしょう? あたし、兄ちゃんも文学のためにとうとう気が変になったのかと思って、夢の中で、ずいぶん泣いたわ、おや、ニュースの時間、茶の間へラジオを聞きに行きましょう、兄ちゃん今夜、サフォの話を聞かせてよ、こないだ貞子はサフォの詩を読んだのよ、いいわねえ、いいえ、あたしなんかには、わからないの、でもサフォは可哀想なひとね、兄ちゃん知ってるでしょう? なんだ、知らないのか...
太宰治 「律子と貞子」
...幸子として立つ瀬がなかった...
谷崎潤一郎 「細雪」
...小生として一言貴下に釈明させて戴(いただ)かなければ立つ瀬がない...
谷崎潤一郎 「細雪」
...日本がサンディカリズムのようなものになっては少なくとも郷男達の立つ瀬がない...
戸坂潤 「現代日本の思想対立」
...ほんにもう立つ瀬がない」「そんなこととは少しも知りませんでした」「亀岡屋は丸つぶれ……父母へなんともお気の毒...
中里介山 「大菩薩峠」
...それをいっしょくたにしてあれこれ云われるのでは立つ瀬がないから...
林芙美子 「生活」
...立つ瀬がないからね」三池の焼餅と早合点は有名なもので...
久生十蘭 「川波」
...いい娘を戦争で死なせた親たちの立つ瀬がない...
久生十蘭 「春雪」
...自分らの立つ瀬がないということなのであった...
久生十蘭 「無月物語」
...私は……私は……なんで……立つ瀬が...
正岡容 「小説 圓朝」
...広海屋の見世(みせ)の立つ瀬がないと思われたでな――はい」広海屋は...
三上於菟吉 「雪之丞変化」
...仲人になったこの俺も立つ瀬がないというもんだして……」「わしもそう思うです...
矢田津世子 「凍雲」
...その場でなんとかしなければ当人の立つ瀬がないんですから...
山本周五郎 「思い違い物語」
...白い激浪の泡立つ瀬戸に...
吉川英治 「鳴門秘帖」
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