...放埒(ほうらつ)な、移り気(ぎ)な、想像も及ばぬパッションにのたうち回ってうめき悩むあの大海原(おおうなばら)――葉子は失われた楽園を慕い望むイヴのように、静かに小さくうねる水の皺(しわ)を見やりながら、はるかな海の上の旅路を思いやった...
有島武郎 「或る女」
...揺椅子(ゆりいす)のなかにうづくまる移り気をそそのかして...
大手拓次 「藍色の蟇」
...この移り気が禍いして一生をだいなしにする者がどのくらいあるか判らない...
相馬愛蔵 「私の小売商道」
...人からは移り気だの飽きッぽいのといろいろ非難されますが...
高村光雲 「幕末維新懐古談」
......
峠三吉 「原爆詩集」
...いくら移り気の葉子でも...
徳田秋声 「仮装人物」
...青年男女の顔つきを――移り気な欲望や懸念(けねん)や皮肉などの波の過ぎるのがよく見て取られる...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...不思議な民衆である! だれでもこの民衆を移り気だと言っているが...
ロマン・ローラン Romain Rolland 豊島与志雄訳 「ジャン・クリストフ」
...)(三) 移り気彼の感情も意志も...
中島敦 「斗南先生」
...あなたの移り気の為に振り捨てた弟が...
浜尾四郎 「悪魔の弟子」
...軽率と移り気の非常に有力な証拠であろう...
デイビッド・ヒューム David Hume 井上基志訳 「人間本性論(人性論)」
...歓びといふ美しくて移り気な訪客がわれわれの許を飛び去つたあとではただ侘しい音だけが過ぎ去つた歓楽を物語るのではなからうか? 音そのものが既におのれの反響(こだま)のなかに悲哀と寂莫の声を聴きながら...
ニコライ・ゴーゴリ Nikolai Vasilievitch Gogoli 平井肇訳 「ディカーニカ近郷夜話 前篇」
...その葉は浮華な移り気を戒める如(ごと)く四時青々として緑の色を保ち...
牧野富太郎 「植物記」
...かえってほかから見てまじめな移り気のない男に見えもするでしょう...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...現代の人は皆移り気なふうになっていますから...
紫式部 與謝野晶子訳 「源氏物語」
...わたくしが芸ごとをつぎつぎに変えたのは移り気からだとお思いになりますか」かな女はしずかに嫁の眼を見やり...
山本周五郎 「日本婦道記」
...かるはずみなる移り気(ぎ)の国...
與謝野晶子 「晶子詩篇全集」
...おまけにもう、根が大の浮気もんでしてね、移り気も移り気、――昨日は東、今日は西って調子なんでございますよ!」「でどうなの、アクシーニヤ……あの……」と、彼女の前に立って歩きながら、若いおかみさんが言った、――「お前さんの子は生きてるかい?」「生きとりますよ、おかみさん、生きとりますよ――どうして中々! 憎まれっ子、世にはばかるって、この事でございますよ...
神西清訳 「ムツェンスク郡のマクベス夫人」
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