...すると急に篤介の匂(におい)――篤介の体の発散する匂は干(ほ)し草(くさ)に似ているような気がし出した...
芥川龍之介 「春」
...で、そんな場合には少し神経の春めいた男でしたなら、なんの事はないまるで肉屋の賄板(まないた)を掃除するだけの誠意さえあれば事は足りるんですが、一旦轢死者が、機関車の車台(トラック)のど真ン中へ絡まり込んで、首ッ玉を車軸の中へ吸い込まれたり、輪心(ホイル・センター)や連結桿(コンネクチング・ロッド)に手足を引掛けられて全速力で全身の物凄い分解をさせられた場合なんぞは、機関車の下ッ腹はメチャメチャに赤黒いミソを吹き着けられて、夥しい血の匂いを、発散するんです...
大阪圭吉 「とむらい機関車」
...また実に秋の高逸閑寂な心そのものより発散する香気として...
薄田泣菫 「木犀の香」
...公衆のまえで気取ると私は顔面から水蒸気を発散するのがつねだ...
谷譲次 「踊る地平線」
...その場所の気流の模様によっては肉から発散する揮発性のガスは壁の根もとの鳥の頭部にはほとんど全く達しないかもしれない...
寺田寅彦 「とんびと油揚」
...なにか粘っこい女らしさを発散する...
豊島与志雄 「朝やけ」
...蕃人の体からだけ発散する一種異様な匂いがぷんと鼻をついてくるのである...
中村地平 「霧の蕃社」
...あたかもこの時分に死霊や疫霊が発散するので...
中山太郎 「本朝変態葬礼史」
...あらゆる感情を香気の如く発散する...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...馥郁(ふくいく)たる香気を発散するような京姫は...
野村胡堂 「奇談クラブ〔戦後版〕」
...肌から発散する人間があろうとは...
野村胡堂 「新奇談クラブ」
...大きな道具から発散する...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...何んというこれはまた魅力を発散することでしょう...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...その聡明さが内から発散するのでしょう...
野村胡堂 「銭形平次捕物控」
...手は人間の魂のエーテルを発散するところだから...
林芙美子 「浮雲」
...怠惰のもつ魅力が発散するかと思われた...
トオマス・マン Thomas Mann 実吉捷郎訳 「ヴェニスに死す」
...彼の嗅覚(きゅうかく)は彼女たちの躯から発散する匂(にお)いにひきつけられた...
山本周五郎 「青べか物語」
...実さんの舞台表現となって発散するのだ...
夢野久作 「実さんの精神分析」
便利!手書き漢字入力検索
この漢字は何でしょう??