...生ぬるいらしい酒をずるつと啜り込む音とが堪らなく気持がよかつたのだ...
有島武郎 「骨」
...そして生ぬるいかめの中の日向水を息もつかずに...
伊藤野枝 「火つけ彦七」
...生ぬるい液体が食道をこころよく流れ落ちる...
梅崎春生 「風宴」
...二人で生ぬるい番茶を飲んだ...
太宰治 「パンドラの匣」
...少なくも自身にとっては下手(へた)な芸術や半熟の哲学や生ぬるい宗教よりもプラグマティックなものである...
寺田寅彦 「コーヒー哲学序説」
...とも子はそれを噛り生ぬるい湯を呑んで外へ出た...
戸田豊子 「歩む」
...しかし、表向き隊の屯所(とんしょ)の方面は、今暁、昨晩からかけてものすごい人の出入りで、ものすごい殺気が溢(あふ)れ返っていると見えたが、それも、やがて、げっそりと落ち込んだように静かになってしまったから、今朝の月心院の庫裡(くり)の光景というものは、冷たいような、寒いような、生ぬるいような、咽(む)せ返るような、名状すべからざる気分に溢れておりました...
中里介山 「大菩薩峠」
...ボートの底に溜(たま)った生ぬるい水に漬りながら...
中島敦 「光と風と夢」
...ある生ぬるい晩を歩きにでると世の中がすつかり変化(かは)つてしまつたやうに感じる...
萩原朔太郎 「月に吠える」
...生ぬるい水を腹いっぱい呑んで...
林芙美子 「新版 放浪記」
...桜の枯木は生ぬるい影を地面に曳きずってゐた...
原民喜 「冬晴れ」
...虎の子の様にしてある二十円近い金を手離なさなければならないのを思って、寒い様な気持になったお節は、ランプの、わびしい黄色い灯かげを見ながら、「アアアアと生欠伸をかみころして、生ぬるい、ぼやけた涙をスルスル、スルスル畳にこぼした...
宮本百合子 「栄蔵の死」
...詩集をひらくというような生ぬるいものではないのです...
宮本百合子 「獄中への手紙」
...脂肪の多い妻は生ぬるい白い乳をしぼっては...
室生犀星 「童子」
...採用されるか斷はられるかなどといふ生ぬるいものではなく...
吉川英治 「折々の記」
...私たちが生ぬるい心で少しも早く何事かを仕上げようなどと考えるのは...
和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
...――Kは生ぬるいメフィストを連想させた...
和辻哲郎 「転向」
...まさしく彼は自分の浅い生ぬるい経験から押して...
和辻哲郎 「転向」
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