...さうなれば何(ど)んなに物悲しい自分になるだらうと思ふのである...
鈴木三重吉 「赤い鳥」
...それが堀川とか野崎とかいふものを聞かせて貰つたときの物悲しい心持に似てゐるやうにも思はれる...
鈴木三重吉 「桑の実」
...こんな古びた家の物悲しい陰の中に居てさえも...
R.W. チェンバース R.W. Chambers The Creative CAT 訳 「四風の街」
...どこからともなくその物悲しい子供の泣き声を聞いた時にはじめて...
中里介山 「大菩薩峠」
...「何? 乞食巡礼の歌? それにしても、腹の底から掻きむしられるような、物悲しい声だ、方角は、切支丹屋敷の方かな」「切支丹屋敷なら尚の事、行ったところで仕様があるまい、黙って坐って、何時ものように浮々と、もう一献過しなさいまし」「いや、今晩は家へ帰ろう、丁度此処へ来てから十日目だ」「あれさ、お前」梅仙女は犇々と三十郎の身体に絡み付いて、その邪悪妖艶な魔手の中に溶(とろ)かし込もうとします...
野村胡堂 「新奇談クラブ」
...どう考へたつてその男の外にはねエ」佐吉は憤々(ぷん/\)として作松の物悲しい顏を指すのです...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...一と晩だけは其儘にして置いてくれ」お雪の物悲しい瞳に引摺(ひきず)られるやうに...
野村胡堂 「錢形平次捕物控」
...どんな一つの物悲しい言葉が聽えてくるか――一つの怪奇な木偶(にんぎやう)の靈魂は...
萩原朔太郎 「宿命」
...不思議な物悲しい郵便局よ...
萩原朔太郎 「宿命」
...その上に腰をかけて編物をしてゐる娘もなく煖爐に坐る黒猫の姿も見えない白いがらんどうの家の中で私は物悲しい夢を見ながら古風な柱時計のほどけて行く錆びたぜんまいの響を聽いた...
萩原朔太郎 「定本青猫」
...そこの家具の肱掛椅子や椅子がくすんだ色と輝く色が代わる代わる縞をなしている植物繊維の材料で出来ているのを見ることほど物悲しいものはない...
バルザック Honore de Balzac 中島英之訳 「ゴリオ爺さん」
...自嘲(じちょう)や物悲しい表情から...
フレッド・M・ホワイト Fred M. White 奥増夫訳 「黄金薔薇」
...どうしても逃れる事の出来ない運命に囚(とら)われてしまったような物悲しい気持になってしまったのでした...
夢野久作 「少女地獄」
...Ten(テン)Teretsuku(テレツク)Teretsukutsu(テレツクツ)Don(ドン)Don(ドン)…………という風に……あの BAKA-BAYASHI の何億万倍か重々しくて物悲しい...
夢野久作 「戦場」
...物悲しい微笑を漾(ただよ)わしている博士の顔を仰いだが又...
夢野久作 「ドグラ・マグラ」
...黎明の物悲しい霧が立ちはじめた...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...物悲しい夕方になると...
ピエル・ロチ Pierre Loti 吉江喬松訳 「氷島の漁夫」
...」Whole Body thinks. そして思索のために物悲しい影の浮かんでいるその顔は...
和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
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